幸せな老後を送るにはどんなことに気をつければいいのか。淑徳大学総合福祉学部教授の結城康博さんは「老後は孤独を感じやすくなるため『すぐに頼れる人』が周囲にいることが重要だ。介護施設に入る際は、身元保証人や緊急連絡先を求められる場合が多いため、親族に頼れない人は施設への入居を断られる場合もある」という――。(第2回)

※本稿は、結城康博『介護格差』(岩波新書)の一部を再編集したものです。

頭を抱えてソファに座っている高齢男性
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「人間関係の希薄化」が老後の重要課題

介護生活は経済状況に大きく影響を受けるのだが、「人間関係の希薄化」も大きな課題の1つである。

筆者は、これまで多くの介護関係者に話を聞いてきたのだが、独居高齢者、老夫婦高齢者、家族同居高齢者において、それぞれの「孤独」があり、それによって介護生活も左右される。これは在宅であれ施設であれ違いはない。なぜなら要介護者となれば、自分で自由に体を動かすことができず行動範囲が縮小していくからだ。

認知症ともなれば、当然、人間関係は健常時と比べて希薄化していく。心身の機能低下が避けられない要介護者は、どうしても「寂しさ」を感じる時間が増えてしまいがちになる。そして、人間関係も希薄化していくなかで「生きがい」「充実感」なども減退していく可能性が高くなる。

例えば、特別養護老人ホームや有料老人ホームの生活相談員の話によれば、入居高齢者が元気か否かは、定期的な面会人がいるか否かで違うという。コロナ禍で家族らの面会制限があった時期を除けば、家族や友人が適宜、面会に来る高齢者は介護生活も充実しているそうだ。しかし、全く面会人が来ない高齢者は、それなりに元気ではあっても寂しげな表情を目にするとのことである。

安心して介護生活を送るには、一定の人間関係が継続・維持されていることが鍵となる。