甥や姪が身元保証人を担うケースはほとんどない

どうしても、在宅介護現場の援助者は日常生活を支えることも介護の一部となり、本人からの依頼でも本当にその要望を受け入れても差し支えないのか判断に迷うのである。特に、高齢になればなるほど、本人の意思判断に疑念を抱く場面がみられるため、身元保証人らの確認は援助者の精神的な支えとなる。

車椅子に座った高齢者の手を取る介護者
写真=iStock.com/kazuma seki
※写真はイメージです

通常、関係がそれほど悪くなければ息子や娘ならば、同居していなくとも身元保証人として入院もしくは入居の手続き、その後の家族対応はしてくれるに違いない。また、子どもがいない高齢者は姪や甥、年下の従兄妹といった親族が身元保証人として引き受けてくれるだろう。

しかし、筆者が話を聞いたあるケアマネジャーによると、娘や息子以外での親族が身元保証人を担うケースは、高齢者本人が若い時から親戚付き合いに心がけていた場合に限るとのことであった。当然のことではあるが、甥や姪に連絡して身元保証人を断られるケースも多々あるそうだ。「甥や姪といっても、人生のうちで2、3回程度しか会ったことがないので」と、全く他人の関係であることは珍しくない。

「身元保証」「死後事務」「医療同意」が関心事に

筆者が研究者として関わっている都内の地域包括支援センター449カ所から回答を得た226カ所の調査結果によれば、身元保証人の有無は要介護者を介護施設等に入居させる重要なポイントであることがわかった〔東京都社会福祉協議会(ソーシャルワークヴィジョン検討小委員会)「さまざまな問題を抱えた高齢者の行き場・実態調査報告書」2019年10月〕。

「施設系サービスを決めるときに何を重視して決めていますか」(複数回答最大3つまで)という問いに対して、複数回答ながらも高齢者の「経済的なニーズへの対応」が一番多く約23%、「待機者が少なく早期の入所が可能」約13%、「信頼できる施設であった」約12%、「医療的ニーズへの対応」約11%、「身元引受人・成年後見人が不在でも入所できる」約10%と続いた。

また、自由意見として「保証人、身元引受人をどのようにしていくかが大きな課題」「施設の相談員さんは『身元保証』『死後事務』『医療同意』はだれが行うのかを常に気にしており、この3点をクリアすれば行き場が広がる」「身元保証や財産管理、死後事務等を費用をかけずに保証する仕組み、法制度」「保証人がいなくても借りられるような制度」といった回答が寄せられた。