若い頃から人付き合いをしているかが重要

しかし、要介護者となっても親族であれ友人であれ定期的に交流を保つには、若い時から人間関係の重要性を認識し「人付き合い」を心がけておく必要がある。確かに、要介護1・2となり、デイサービスなどを利用することで、新たな要介護者同士の人間関係を構築できる機会はあるが、要介護者となって、新たな人間関係を構築していくことは非常に難しい。また、有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅(サ高住)に入居することで、高齢者同士で友人をつくることもできるだろう。

しかし、要介護者同士で人間関係を構築するのには若い時から「人付き合い」の重要性を心がけていることが不可欠である。仮に、若い時は人との交流を避けて過ごしていたが、高齢者となって急に生き方を変えるとしたら相当な努力が必要となる。

寝たきりや常時車椅子といった中重度の要介護者ともなれば、新たな人間関係の構築はさらに難しくなる。もっとも、パソコンやSNSに精通している要介護者は例外かもしれないが。

80代になると一気に孤独感が深まっていく

内閣府資料によれば、年齢別にみると「孤独」を感じている割合は、70代がもっとも低くなっている。男性と女性を比べると80歳以上を除くと男性のほうが「孤独感」を感じやすい傾向だ(図表1)。

【図表1】孤独感が「しばしばある・常にある」と回答した人の割合
出所=『介護格差

このデータで興味深いのは、年齢を重ねるごとに「孤独感」を抱く割合が減少傾向であるものの、80歳以上となると一挙に上がっていくことである。高齢者といっても70代は元気であり心身ともに良好である者が多い。旅行、カラオケ、ゴルフなど趣味の活動をしたり、アルバイトなど仕事をしている人も珍しくない。

しかし、80歳をすぎると心身機能の低下が際立つようになる。なお、生産年齢人口(15~64歳)層の「孤独感」と、80歳以上のその捉え方は、若干、異なると推察され「老い」「介護」「死」といった心情が複雑に重なり合っての「孤独感」であろう。そのため介護の良し悪しに関しては、本人の「感情」という主観的な側面も無視できず、「孤独感」に陥らないようにしていくことが明暗の分かれ目ともなる。