名門ホテルは「デート場所」も教えてくれる

「ラグジュアリーになればなるほど、そして名門と言われるホテルほど、その接客に感動します。特にロンドンは貴族たちが郊外に所有していたカントリーハウス、ロンドン市内のタウンハウスで仕えていた執事たちが支えてきたサービス文化というものが確立されている気がします。

例えば、『ザ・リッツ・ロンドン』に滞在したとき、世界一人気と言われるアフタヌーンティーの予約が取れなくて……とスタッフに言うと、『大丈夫、まかせてください!テーブルをひとつ持ってきます』と即座に席を作ってくれて、『え? 大丈夫かな?』と心配したほどです。彼らにとって最も悲しいこと、それはゲストを落胆させることなのです。

ロンドンのザ・リッツ・ホテル入口に掲げられた旗
写真=iStock.com/Alena Kravchenko
※写真はイメージです

ザ・リッツ・ロンドンのヘッドコンシェルジュ、マイケル・デ・コサルは世界のホテル界で知られるベテランコンシェルジュですが、『一緒に写真を撮って』と頼むと、こっちにおいでと彼の仕事場のカウンター内に入れてくれたりするのです。フレンドリーだけれど、こよなく温かなリッツ式サービスで楽しませてくれる。

ちなみに彼は、『デートにぴったりの場所を教えて!』などというリクエストはお茶の子さいさい。どんなゲストのリクエストにも応える名人です」

バスタブに約80キロ離れた場所の海水

「彼のエピソードの中で今までで一番びっくりしたのは、『客室のバスタブをブライトンの海水でいっぱいにしてほしい』というリクエストに応えたというもの。ブライトンはロンドンから約80キロ、列車で2時間ぐらいの距離。もちろんその要求に見事に応えたそうです。

そういうホテリエとゲストの人生を分かち合うような物語をたくさん持っているのが、海外のラグジュアリーホテルという気がします。

ちなみに、もうすぐ日本にもオープンする、ヒルトンの最上級ラグジュアリーブランド『ウォルドーフ・アストリア』。その旗印ともいえる『ウォルドーフ・アストリアNY』に泊まったときのことです。

立地もマンハッタン・ミッドタウンのパーク・アヴェニュー沿いという絶好のロケーション。世界中のお金持ちがこの界隈に集結し、夢を叶えてきた場所です。映画や小説でも登場するラグジュアリーホテルの老舗ですが、こちらのレジデンスで過ごした1週間は忘れられない思い出です」