実は有力なのが「小さなインフルエンサー」
月に1度の勉強会、インフルエンサー1人1人に合った投稿スタイルの相談、全国のインフルエンサー同士の交流会などが行われ、現在では、投稿の8割はマニュアルに沿う形として、残り2割を個人の嗜好や個性が発揮できる部分にしている。
70名を超えるまでに増加した社内インフルエンサーには、フォロワー数の増加、投稿から通販への誘導、売上貢献などに応じたインセンティブ制度が設けられており、フォロワー数が10万人を超えるものも含め、総フォロワー数は30万人を超えて活性化している。「こんな魅力がある」といった商品の作り手目線と「こうすれば使いにくさを解消できる」といったユーザー目線、企業とユーザーの中間にいるような目線からの投稿が人気を集めている(※4)。
商品を広める際、強力な発信力を持つインフルエンサーを活用することは、いまやマーケティングの常套手段の1つといえる。しかし、ただ有名なインフルエンサーを活用すればいいわけではない。近年、沢山のフォロワーを持った大きなインフルエンサーに頼るよりも、そこまでフォロワー数は多くなくても、質の高い投稿を続ける小さなインフルエンサーを活用した方が、商品やブランドの継続的な拡散に有効であることが、マーケティングの研究・実務の両面で明らかになっている。
「有名人すぎない」ほうが共感を広げられる
芸能人やスポーツ選手に代表される大きなインフルエンサーの影響力は、瞬間的には強く、広範囲に発信されやすい。しかし、じつは、その影響力の持続時間は短く、すぐに途切れやすい。いわゆる有名人の声に対して、多くの大衆は憧れつつも、「別世界の人」として自分とは線引きして考えやすく、右から左へ通り過ぎるニュースの1つのようになりやすい。また、その投稿が個人的な本音なのか、企業案件の建前なのか、信頼性が揺らぐケースも増えている。
それに対して、有名人すぎずに、自分と近い存在に考えやすい、小さなインフルエンサーが発信する情報は、多くの大衆が自分事として受け止めるため、信頼されるクチコミになりやすい。クチコミが爆発的に、一気に広がっていくよりも、SNS上の幾つもの小グループを通じて波及していくことによって、「私も」「同じように」「使ってみよう」という共感をじっくり広げていくことができる。後者に該当するスリーコインズの社内インフルエンサー活用は、共感をじっくり広めることで、単発で途切れにくい、継続的なバズを浸透させることに成功している。
こうした開発力と拡散力に支えられることで、スリーコインズは、ユーザーに飽きられることなく、ライバルとの競争に打ち勝ち、単発の成功では終わらない、中長期的な成長を実現している。
【参考文献】
※1 日本経済新聞「3COINSのパル知ってる?(上)進化着々、売り場に新味」、日経クロストレンド「雑貨店「3COINS」が食品に本腰 “映え”で拡散、併せ買い狙う」を参照。
※2 東洋経済オンライン「3COINSが大型店で攻勢、全国で人気が広がる理由」を参照。
※3 宣伝会議「コンセプトとは覚悟であり、宣言である。」を参照。
※4 @DIME「社内インフルエンサーは70名!着実にファンを増やす3COINSのInstagramマーケティング」、スタジオパーソル「社内インフルエンサーが活躍。雑貨ブランド3COINSのインスタ戦略」、アドタイ「3COINSのSNS、なぜ人気? 広告なしで150万フォロワー」、Web担当者Forum「広告費ゼロでフォロワー170万人! 3COINSの人気Instagramの秘密は「社内インフルエンサー」」を参照。