4週間のサイクルで新商品を出していく

「良いモノ」「面白いモノ」を生み出し続ける開発力と並んで、スリーコインズの大きな強みになっているのが、モノ・情報を広め続ける拡散力だ。これには、「店頭での拡散力」と「SNSを通じた拡散力」の2つが指摘できる。

店頭での拡散力は、ユーザーに「いつ行っても新しい発見がある」と思わせるほどの新商品のハイスピード展開による来店の習慣化がカギになっている。スリーコインズでは、新商品の開発から販売までを4週間という短サイクルで実現している。これは、もともとパルグループのアパレル事業で取り組んでいた方針を雑貨事業にも導入したもので、毎週、新商品が店頭に登場する体制が整えられ、毎月700から800もの新商品が発売されている(※2、3)

このサイクルが「行くたびに新しい商品がある」という評判を呼んで、ユーザーが店舗を定期的に訪れる習慣形成に成功している。売り場に来てもらえれば、あとは自慢の開発力で生み出したさまざまな商品が、ついで買いの連鎖で広まっていく、という勝利の方程式である。

スマートフォンに表示された各SNSのアイコン
写真=iStock.com/Adam Yee
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「社内インフルエンサー」の活用に成功

もう1つのSNSを通じた拡散力は、社内インフルエンサーの育成・活用が原動力になっている。SNSの中でも特に重視しているのがインスタグラムで、スリーコインズの公式インタグラムはフォロワー190万人(2024年8月末)を超える人気アカウントになっている。2015年の開設以来、毎日1、2回の高頻度で新商品などの投稿が活発に行われている。この公式アカウントと相乗効果を生んでいるのが、社内インフルエンサーたちの個人アカウントの活性化だ。

2016年、さまざまなアパレルブランドで社内インフルエンサーが話題になり出した頃、スリーコインズでも「スタッフインフルエンサー制度」を発足した。全国のスタッフから立場やキャリアに関係なく、やってみたい人を募って始めた取り組みだ。当初は、10名程度が社内インフルエンサーとなり、簡単な研修やマニュアルを踏まえて、自主性に任され、それぞれが個人の目線で商品を宣伝する発信をしていく形だったという。

定期的な社内公募でインフルエンサーを増やしていき、さまざまな投稿が重ねられていくにつれて、情報発信の成功と失敗、フォロワー数の伸びるアカウントと伸び悩むアカウントなどが出てきた。そこで、成果の高いインフルエンサーを「強化インフルエンサー」に選んでノウハウを共有したり、投稿・反応のデータ分析を通じて有効な発信スタイルを発見したり、より効果的な社内インフルエンサーの活用方法が模索され続けている。