4年間で2倍以上の業績を叩き出す

「今、最も集客力があるスーパーマーケットはどこか」と聞かれたら、ロピアと答える人は多いと思います。神奈川県川崎市に本社を置くロピアでは、店頭での長蛇の列と車の渋滞が常態化していますが、それでも顧客が待つことができるのは、なぜなのでしょうか。

ロピア いずみ中央店
ロピア いずみ中央店(横浜市泉区上飯田町)(写真=Thirteen-fri/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

ロピアの由来となっている「ロープライスユートピア」が示す通り、ロピアの売りは、「値段の安さ」に加え「品揃え」であることは既知の通りですが、アマゾンやコストコ、ウォルマートに代表されるように、今やマーケットプレイスにとって低価格と豊富な品揃えは当たり前のことで、集客のための必要条件とは言えますが、十分条件にはなっていないというのが実態です。

ロピアの集客力は、売上高の推移を見れば一目瞭然です。1971年の創業以来、売上高は着実に増えてきましたが、2020年に2000億円を超えると、2024年2月期には4126億円に達し、この4年間で2倍以上の業績を達成するに至っています。

出店数で見ても創業以来右肩上がりで推移し、今年だけで見ても、8月にオープンした五所川原店(青森県)や泉ヶ丘店(大阪府)を加えると13店舗が新たに開店し、全国で100店舗を達成するに至っています。

買い付けや商品開発もチーフが行う現場主義

経営手法の特徴をマーケティングの視座から見ると、スーパーマーケット(スーパー)のビジネスモデルは、一般的に、商品企画から開発までの工程を本部のマーチャンダイザーが担います。

つまり、買い付けやプライベートブランド(PB)商品の開発は本部主導で行い、それをもとに各店舗の店長が統括して指揮をとり販売していくことから、商品の裁量権は自ずとマーチャンダイザーに集約されることになります。

ロピアでは、このような従来型のモデルを採らず、売り場ごとの長であるチーフに多大な裁量権を持たせることで、売り場という現場主導のオリジナルなビジネスモデルを構築するに至っています。

買い付けやプライシング(販売価格の決定)などマーケティングミックスはすべて、チーフの裁量に委ねられ、PBの企画開発もチーフが担います。裁量権を現場の一番近いポジションで顧客に接しているチーフに集約することで、品揃えや価格設定など、その地域にあった事業展開が可能となるのです。

売り場は、どの店舗でも基本的に、「精肉」「鮮魚」「青果」「食品」「惣菜」の5つの部門に分けられていますが、各売り場に個人商店のような“屋号”が付いているのは、チーフに多大な裁量権を持たせ、現場主導で各売り場の専門性を向上させることで、より魅力ある商品を顧客に提供するためです。