顧客満足度を高めるスパイラルの仕組み
顧客価値の源泉として、PBの開発力もまた、ロピアの重要なケイパビリティになります。食品売り場では、ロピアの歴代チーフが開発したPB商品も少なくありません。中でも、チルド麺の「渾身の一杯特濃味噌ラーメン」(2食入り・247円)は、6万食の大ヒットを記録しています。
この商品を開発したチーフは、全国の味噌ラーメンを食べ歩いて研究し、野菜の旨みエキスに脂、ニンニク、合わせ味噌を加えることで、インパクトのあるオリジナル味噌ラーメンの味を作り出すに至りました。
このように見てくると、ロピアは、「顧客志向の組織づくり」⇒「現場力の向上」⇒「顧客価値の創出」という一連のスパイラルを構築することで、顧客満足度を恒常的に高いレベルで維持する戦略を採っていることがわかります。
つまり、チーフ制の導入などで“顧客志向の組織”を作り、内部に競争環境を作ることで“現場力の向上”を図り、商品にひと手間や工夫を施すことで“顧客価値”を創出するというスパイラルを組織的に構築し、社員一人ひとりの“暗黙知”を引き出すことでその完成度を高めているのです。
過当競争で「部分最適」に陥るリスクも
このスパイラルは、ロピアのコア・コンピタンスとして十分に機能していることから、現状では、顧客満足度を競合他社よりも高いポジションで獲得できており、結果として、リピーターを増やすことにつながっていると言えます。
今後、ロピアがこのスパイラルの完成度を高めるうえで懸念されるのは、5つの売り場の競争関係が過剰となりサイロ化する可能性が生じることです。そうなると、各売り場は、短期の利益を優先することになり、部門内の部分最適に傾注しがちになることが予想されます。
ロピアでは、2031年に、グループ全体で売上高2兆円達成を主要な成果目標として掲げていますが、この目標を達成するために、今後いかなる成長戦略を打ち出して、部分最適を高いレベルで維持しつつも全体最適を図るのか、本部の経営手腕が問われることになります。