海外に挑戦する姿勢が必要だ

さらに、日本の中小企業には、技術力だけでなく提案力もある。ここ数年ASEAN(東南アジア諸国連合)のローカル企業もかなり力をつけてきてはいるが、それはまだ、発注元である大手企業から渡されたやさしい設計図のものをつくることができるレベルだ。

なぜなら、プロトタイプ(原型・新製品)の立ち上げに貢献できるくらいの実力がなければ、群雄割拠する厳しい日本市場では、生き残ってこれなかったのである。

日本国内には、貸与された図面ではなく、自ら図面を描き提案もする企業(承認図メーカー)はいくつもあるが、タイのローカル企業では1社しかない。つまり、日本と東アジアでは、技術力でまだそれくらい差があるのである。タイにしても中国にしても、ものづくりのレベルからいったら、せいぜい日本の80年代くらいだといってもいいだろう。

だから、日本の中小企業の技術をもってすれば、東アジアへの進出は非常にやりやすいといえる。ただし、現地で雇用した人たちには5S(整理、整頓、清掃、清潔、躾)から教えなければならないといった、日本にはない苦労があることも忘れてはならない。

また、国内で、大手の系列で仕事を請け負っている中小企業は、海外に進出すると系列の枠が外れる。つまり、日本国内だと、トヨタ自動車の協力企業はトヨタの仕事中心になってしまうが、東アジアに行けば、トヨタの仕事をしながら日産自動車ともホンダとも三菱自動車ともつきあえるようになる。

しかも、日本でトヨタの仕事をしていたといえば、どこの自動車会社からも信用されるから、取引先を広げるのはそれほど難しくないのだ。

それに、日本は、消費者の求める品質、競合他社の多さの点において、世界で一番厳しいマーケットだ。そこで何十年も実績を挙げ続けることは容易ではないと世界中の人が知っている。それゆえ日本の中小企業となら取引をしたいという海外企業も少なくないのである。