「ハリス政権」は「アメリカファースト」を取り入れる?
バイデン政権の看板とも言える環境対策でも、もはやトランプ氏との違いを見いだすのが難しいほどだ。たとえばハリス候補は、2019年に反対を表明していた石油や天然ガスのフラッキング(水圧破砕法)による採掘について、接戦州である石油産地ペンシルベニアにおいては反対しないと、立場を翻した。米国人の雇用を守るためだ。
さらに、日本製鐵による米同業大手USスチールの買収計画について、米国製鉄業の象徴的存在であるUSスチールは米国内で所有され続けるべきだと言明し、米国第一主義をますます鮮明化させている。
一方、トランプ氏は「バイデン政権のEV強制で安価な中国製EVに席巻され、米国人労働者が失業する」と攻撃しているが、ハリス氏が副大統領を務めるバイデン政権は今年3月、2027年から適用する自動車の環境規制を緩和した。ガソリン車を生産できる期間を延長し、自動車製造に従事する米国人の雇用を減らさない間接的な効果がある。
このように米民主党は「アメリカファースト」に舵を切っている。
ハリス氏が大統領候補に指名された民主党全国大会では、まるでトランプ氏の支持集会のように、参加者が「USA! USA! USA!」を連呼し熱狂していた。
もし「カマラ・ハリス大統領」が実現した場合、実質的には「バイデン2.0・オバマ3.0」の政策を実行するだろうが、一方でトランプ的な政策も取り入れなければ、政権運営に行き詰まるだろう。
「具体的な方策」が求められる
一方、もし「小泉進次郎首相」が実現した場合も、同様に、その時々の世論に応じて、大衆迎合的な政策を実行していくだろう。
ハリス氏同様に「ビジョンなきグローバリスト」である以上、ポピュリズムを志向するのはある意味当然かもしれない。
小泉進次郎氏の研究で知られる東京工業大学教授の中島岳志教授は、「米国への留学中にジャパンハンドラーズの代表的人物とつながりを構築した小泉氏は、父の純一郎氏と同様、米国の意向に沿うような政策を志向するだろう」と指摘する。
小泉氏は少子化対策のほか憲法改正も持論とのことだが、はたしてどこまで米国の意向に沿って政権運営するのだろうか。
国際協調からブロック化に転じる国際情勢の下、どのように日本の生き残りを図るのか。
進次郎構文ではないが、「力こそパワー」をむき出しにしつつある世界にどう対応するのか、その具体的方策を打ち出さなければ、長期政権はおろか、総裁選の当選もおぼつかないのではないだろうか。