例えば、専業主婦だった妻が、夫に先立たれたとします。年金受給額が減り、生活は一気に行き詰まります。親子で家賃滞納→生活保護というルートが待ち構えています。

「老人ホームに入るカネを使ってしまった」
「このままでは介護も受けられない」

と嘆く人たちを大勢見てきました。

必ず限界が来る、貯金が尽きるのは目に見えている――。でも、多くの人が対策を講じることなく放置しているのが現状です。自分が80歳になった時に動いても遅いのです。

「息子さんが死ぬまで面倒みられますか?」と伝えたい

内閣府が2023年3月に公表した調査結果によると、15~64歳で引きこもり状態にある人は推計146万人にのぼります。子供から中高年までの全世代の推計が明らかになったのは初めてのことです。

【図表1】ひきこもりに関する状況
内閣府が2023年3月に公表した調査結果

不登校も同じでしょうが、人は1週間社会生活から離れると、どんどん引き籠りがちになります。学校を休んだら行けなくなる。仕事を休んだら続けられなくなる。だからこそ部屋から出ることが、最初の一歩だと言われています。

今回取り上げた38歳の男性は安い物件に引越し、自分のお金で生活を成り立たせることが先決でした。人生は何歳からでもやり直せると言っても、就職するにはギリギリの年齢かもしれません。でも自分で働いて自分で家賃を払って生活していくには、いま立ち上がらなければなりません。そうでなければ、この先もっと自立は厳しくなります。

「息子さんが死ぬまで面倒みられますか?」

私が両親に言いたかった言葉です。

このまま親が息子の生活費を負担し続けることは、ますます子供の生きる意欲を削いでしまいます。息子への愛情なのかもしれませんが、長期的に見れば不幸の入り口となります。そして両親の家計は、いずれ破綻します。「もう払えない」となったら、さらに年を重ねた子供はその先どう生きていけばいいのでしょうか。

子供への愛情が、子供と自分自身を苦しめる

払うべきは息子の生活費ではなく、専門家への相談料です。共倒れの未来にこのまま突き進むか、息子を自宅に戻して再起させるか、家族で小さな家に引っ越して家賃を抑えながら暮らしていく――そんな選択肢もあります。

家族の中だけで解決しようとせず、現実からも逃げてはいけません。体力のあるうちにできる対策を講じることが「8050問題」を避ける方法だと感じています。

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