大雨の際に見なくてもいいように備える

大雨・台風時に、直接、様子を見に行かないように、最新技術や制度を導入することも検討に値すると思います。補助が出るものもあります。

1つはウェブカメラを活用することです。現在、国土交通省や地方自治体は、大きな河川を中心にカメラが設置され、河川の状況をライブで公開しています。ぜひ、関係する河川のライブ映像がどのようなインターネットサイトから見ることができるか、調べておいてください。区市町村のホームページなどからリンクが貼られていることも多いです。

田んぼや農地などの私的な土地であっても、現在では安価にカメラを取り付けて、自宅で監視することもできます。実際に豪雨災害に見舞われた被災地で、こうしたライブ映像を見ることで外出をあきらめることができたという声がありました。

また、手動の水門や用水路の開閉について、監視カメラを付けるとともに、水害時には遠隔操作で自動的に開閉ができる「水門や用水路の自動化」の技術が進んでいます。現在では多くの会社がこの技術を開発していて、金額も少しずつ安くなってきています。大きな水門についてはまだまだ高価ですが、用水路の自動給水栓などは安価になってきました。自治体によっては補助金が出るところもありますので、一度、相談をしてみてもよいかと思います。

さらに、被害が出ることを前提にして、農業保険(収入保険・農業共済)に加入しておくことも重要です。農業保険は、農林水産省による公的保険で、国が保険料の一部を補助します。万一の大災害時にも国の再保険でしっかり補償してくれます。任意加入のために、無保険の農業者も多いのですが、自然災害による農林水産業への被害額は増加傾向にあります。自然災害以外にも様々な事態に備えることができるので検討してみてください。

「外の様子を見に行く人」を引き留めるための“言葉”

本番になったら「周囲の人の引き留め」が、行動を抑制させる最後の手段になります。

「好奇心」パターンの人に対しては、「天気予報で今後の風雨がひどくなることがわかっている」、「テレビなどで今すでに非常事態であることがわかる」、「今行くべきことか」、「命よりも大切なことか」、「自分たちは家に留まるのに1人で勝手に行動するのか」と、単に「危ないからダメ」ではなく、正常性バイアス、楽観主義バイアス、同調性バイアスをなるべく解消するように具体的に働きかけることが効果的です。

実際に、同調性バイアスについては、家族やご近所が「避難しよう」と言ってくれると、自分にその気がなくても「周りが言うから」といって避難をする傾向があることが、西日本豪雨の被災者への調査でも分かっています[関東学院大学・大友章司先生の研究(2020年)による]。

雨滴のついた窓越しに外を眺める高齢者
写真=iStock.com/KatarzynaBialasiewicz
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