「好奇心」が抑えられない3つのバイアス

人間には「知りたい」という知的欲求があります。大雨や台風で、外がどうなっているのか、川の増水のようすや被害のようすがどうなっているのかを「見てみたい」のです。

浸水した場所の写真
写真=iStock.com/wsfurlan
※写真はイメージです

もちろん外は危険なので、多くの人は危機感を持って知的欲求を抑えるのですが、中にはあまり危機感を持たない人もいます。それらの人は、3つの「考え方のクセ」にとらわれていることが多いように思われます。心理学では、人々に共通する考え方のクセを「バイアス」と呼んでいます。

1つ目は「正常性バイアス」です。普段とは違うことが起きていたとしても、見た目で大きな違いがなければ「特に変わったことはない」として心を安心させてしまい、考えることを止めてしまうクセです。

窓から見た雨のようすが大したことがない、特に風が強いわけではない、家の中に浸水してくるような気配がなければ、天気予報で大雨になることが分かっていても「まあ大丈夫だろう」と心を平静に保ってしまい、その結果、対応が遅れてしまいます。危険と隣り合わせだったとしても「見た目」が大きく変わらないと、人はなかなか動かないのです。

考えることを止め、危機感を持てなくなる

2つ目は「楽観主義バイアス」です。過去の経験から「今回もまあ大丈夫だろう」と、楽観的に思って、考えることを止めてしまうクセです。

これまで大きな災害に巻き込まれた経験がない人に限って、「今まで大丈夫だったのだから、今回も大丈夫。めったに起きないし、まさかこの地域に限ってそんなことは起きない」と、根拠なく考えてしまいがちです。もちろん「今まで起きなかったから、今回も起きない」なんて理屈はありません。

3つ目は「同調性バイアス」です。周囲の人たちの言動に、自分の考えを合わせてしまう考え方のクセです。人間は社会的動物ですので、集団の中で協調性を保ち、集団にいることで安心感を得ようとする傾向があります。「家族も近所も災害に対して何もしていないみたいだし、まあ、取りあえず行ってみようか」と思って、考えることを止めてしまうのです。

この他にも、テレビで「行くな」などと禁止されるとますます行きたくなるという「カリギュラ効果」や、大雨・台風に対する不安・恐怖が刺激となってアドレナリンやドーパミンが放出さて、感情がゆさぶられて「わくわくする」気持ちとして認識されてしまうという、一種の「吊り橋効果」などもあると言われています。