骨盤を使えないと、良い姿勢にも猫背にもなれない

そのオン・オフを分けるのは、「何らかの仕事をするか、しないか」です。つまり、何かの用事、仕事をするのならば右のS字の状態でないといけない。

左の猫背の人は、何も仕事をせず、ただぼーっと休憩するならば猫背でもなんでもよいということです。オフです。用事、仕事とは、自分の腕を前に出すだけでも仕事です。それをしない本当のリラックス時には、どうぞお好きに猫背でもなんでも休憩してください。私たちはなんとなく「猫背は悪いものだ」という考えが頭にあるので、「本当に猫背になりきる」ことができないのです。どこかで止めてしまっているのです。

加えて「骨盤の回転」という概念がないと、中途半端な「よい姿勢」で生きることになります。猫背にもなれず、本当のS字にもなれない。体を縮ませた「なんとなくよい姿勢」で生きている人が大勢います。

骨盤の回転による本当によい姿勢もつくり、遠慮なく猫背にもなれる。これがよい体です。ただし、S字のよい姿勢と猫背の比率は50対50ではありません。人の生活は用事の連続ですので、起きて用事や仕事をしているときはS字です。ですので、私は「S字のよい姿勢」と「猫背」の比率は、90対10〜80対20ぐらいと言っています。

よい猫背のコツは「お尻を回し下げていく」ように猫背になることです。ここでも出発点は骨盤です。よい姿勢のときの逆方向に回転していきます。猫背にも、骨盤の回転が必要です。お尻を回し下げて猫背になれる人は、骨盤が柔軟な人です。

意外と重要な「和式トイレ座り」

「猫背になってください」と言うと、頭や肩を下げるだけで、骨盤も背中も動いていないことがほとんどです。それは猫背ではありません。ここでも、「猫背は悪いこと」「悪いことはしてはいけない」という思い込みが無意識に働いています。それぐらい、その人の考え方が体に影響してしまうのです。

先ほども言いましたが、これは排便するときの姿勢でもあります。猫背だと排便がラクになる。このことを最も実感できるのは、和式トイレです。しかし今はほとんど洋式トイレなので、正しい猫背を学習する機会がありません。こんなところに弊害が出てきているのです。

【図表2】和式トイレ座り
「和式トイレ座り」は正しい猫背が学習できる良い姿勢(出所=『読むと「全自動」で健康になるすごい本』)

最近では、和式トイレ座りそのものができない人もいます。この練習も重要な整体の体操となります。この後もまた猫背には悪者になっていただきますが、ここでのお話も忘れずに、読み進めてください。

和式トイレ座りは、一見ただしゃがむだけです。簡単にできる人には、これが一体何の意味があるのかと思うでしょうが……。やれるから意味がない、ではないのです。これをしておかないと体が崩れていくから、やっておくのです。

和式トイレがなくなった今の日本では、和式トイレ座りはとても重要です。洋式トイレが普及した結果、座りながら猫背になれない人、和式トイレ座りができない人が増えてしまいました。正しい猫背を学習する機会がなくなってしまったのです。これは整体的にはかなり悪い現象です。