骨盤が機能すれば、肩こりも腰痛も改善する
また、筋肉によけいな仕事をさせ続けると、筋肉の力の入れ方が分からなくなっていきます。力を入れたときの感覚、逆に力を抜いたときの感覚。特に脱力は、実はとても高度な技術です。これが整体的な「体の実力」を決めているとも言えます。床に寝転んで、本当に力を抜いてリラックスできる人は、実は少ないのです。
たいてい、寝ていても、どこかしら力みが残っています。寝るときにだけ力を抜こうとしても、できません。普段から骨を骨として使って、筋肉によけいな仕事をさせていない人だけが、ゆっくりぐっすり眠れる人なのです。
そして骨に骨の仕事をさせる発端は、何度も言うように「骨盤の回転」です。これがすべての出発点でしたね。筋肉を充実させたいのなら、筋トレではなく骨盤や骨をまず考える。加齢で筋肉が弱ってきたと思うなら、まず骨盤や骨を考える。そして自分の「矢印」を知る。それだけでずいぶん立派な体になっていきます。この矢印を知らずして、いくら筋肉を考えてもダメなのです。
肩こりで悩んでいる人も、腰痛で苦しんでいる人も、その原因のほとんどは骨を骨として使えていないことです。代わりに筋肉が頑張りすぎている。こんなもったいない話はないと思います。
「悪い姿勢」は内臓にも影響を与える
整体で筋肉のコリを手技でほぐした後、私は必ず日常生活での骨盤の動きや姿勢を見直してもらいます。それにより、肩こりや腰痛から解放されていく人がたくさんいます。
用事のしすぎ、仕事のしすぎで肩こりや腰痛をつくっていたのではなく、骨を骨として使っていなかっただけなのです。骨を骨として使い、筋肉には筋肉の仕事に専念してもらう。これだけで、あなたの体は本来の力を発揮していきます。
さて、もう一ついきましょう。背骨が柱の役割をしてくれないと筋肉が踏ん張って「コリ」をつくると言いましたが、体の前側にはお肉以外にもまだ何かありますよね? そうです、内臓です。背骨が柱の役割をしないので、体がつぶれていく方向に力がかかっていくと……、その場所にいる内臓さんたちはどうなるのか?
内臓もお肉ですから、上から押さえられるとつぶれます。体をつぶす力を、内臓が柱の代わりに受け止めて、つぶれているのです。胃には胃の本来の仕事があり、肝臓には肝臓の本来の仕事があります。そこへ「柱の仕事も同時にやれ」と言われたら、どうなるか? 当然、本業にも影響が出てくるでしょう。