骨盤が上手く使えていれば「コリ」はできない

では逆に、その力がない左の人はどうなるのか?

左の人は腕が落ち放題なのですが、どこかで止まります。止まるということは、何かがつっかえ棒になってくれているか、何かが引っ張ってくれているかのどちらかです。つっかえ棒になっているのは、「肋骨」です。そしてその圧が内臓にもかかります。

もう何もよいことがありませんね。しかし、まだ続きます。落ちようとする腕は、首の筋肉や肩周辺の筋肉も引っ張っています。いつもこの力がかかるので、筋肉はそれに対応するためにかたくなります。これがいわゆる「コリ」です。コリは、落ちようとする力を受け止めるためにつくられているのです。

背骨を押し上げて、上にある重いパーツ(頭と腕)をその背骨に乗せるだけで腕は落ちなくなるので、コリはなくなります。思い出してください、これらすべてのことは「骨盤の回転」から始まっています。たったそれだけ。もう聞くのが嫌になるほどですが、骨盤の回転がないとさんざんなことになります。でも、まだ続きます。

「良い呼吸」に必要なのは特別な呼吸法ではない

肋骨が上がると、呼吸がラクだと説明しました。実際に整体の現場では、肋骨を意識した呼吸法を指導することがあります。しかし、骨盤が回転して背骨を突き上げていれば、特別な呼吸法をしなくても、「よい呼吸」は勝手に行われるのです。

【図表2】呼吸を邪魔しない肩
肋骨の位置が動くことで、自然と「良い呼吸」ができるようになる(出所=『読むと「全自動」で健康になるすごい本』)

前の項目で、胸骨を上げる力が肋骨も上げると言いました。肋骨を上げる力がかかっていると、その肋骨が、肩が前に来ることを邪魔してくれるのです。肋骨が上がって、横隔膜おうかくまくや肺が自由になれば、呼吸が深くラクになります。さらに、肩が前方向につぶれないことによって、呼吸はよりラクになるのです。

肩が前方向につぶれていかなければ、肩にもむだな力がかからないので、腕をより自由に使えます。イラストでも、右の人は肩がまるで胸骨、肋骨、背骨に囲まれて守られているように見えるでしょう。肩や腕がとても自由に動きそうですね。

一方で、左の人はどんどん肩が落ちていき、その重みで胸もつぶれて肋骨も押し下げられていきます。これでは息も入りそうにありません。このように、呼吸ひとつ取っても、腕や肩まで関係しているのです。でも、あまり深く考えないで大丈夫。まず、「骨盤の回転」が起点だということを思い出してください。あとは勝手に備わる力です。まずは、普段の自分の基本骨格が持つ力を本来のものにする。そこを忘れて特別な呼吸法を練習しても、効果は薄いものになるでしょう。