フルセットにもつれこんだフランス戦
キャプテンになってからの代表チームを振り返ったとき、東京オリンピックのブラジル戦は間違いなくターニングポイントといえる試合になった。
そしてもう1つ、今につながる「負け」試合がある。
2022年にスロベニアとポーランドで開催された世界選手権における、決勝トーナメント初戦のフランス戦だ。
東京オリンピックを制した王者で、2年後の2024年にはパリオリンピックが開催されるホスト国でもある。
世界選手権は、各国がベストメンバーで臨む試合の1つでもあった。
勝てばベスト8進出が決まる試合で、第1セットはフランスが圧倒的な力を見せつけてきた。
第1セットを17対25で落とし、そのまま意気消沈してもおかしくない状況を、僕らは楽しんでいた。
「やっぱつえーな」
と言いながら、それなら何が通用するか、そして自分たちは何をするべきかを、劣勢の中でも冷静に模索した。
第2セットを取り返し、第3セットはデュースの末に獲られたけれど、第4セットは再び取り返した。
東京オリンピックのイラン戦と同様に、フルセットへともつれ込んだ。
初めて「勝てる」と思った瞬間
立ち上がり早々に髙橋藍選手や西田選手がスパイクを決めて4対1。15点先取であることを考えれば、3点リードは相当優位に立っているといえる。
ただし、相手はフランスだ。セイフティリードなど存在しない。
そして、まさにそのとおり、そこからフランスの猛追が始まる。逆転されたが、日本も粘った。初めて、勝てる、と感じたチャンスが訪れたのが、15対14、日本が1点をリードした場面だった。
ミスをしないフランスがミスをした。しかも、スパイクボールをネットにかけたのは、あのガペことイアルヴァン・ヌガペトだ。
ここで勝たなければ勝てるチャンスはない、と誰もが思う場面で、僕にサーブ順が回ってきた。
いうまでもない。攻めることしか頭になかった。
「絶対に勝つ、必ず勝つ」
とだけ考えてトスを上げ、ジャンプしてボールをとらえる。
ヒットの瞬間、明らかに力んでいたのが自分でもわかった。ベストな位置よりも少し低い場所で叩いたボールはネットにかかり15対15。