「惜しかった」「いい試合だった」では満足しない

まさに1点を争う展開のまま15点では決着がつかず、デュースが続いた。その後も互いに点を獲り合うなか、フランスが1点を挙げて16対17と逆にマッチポイントをつかまれた。

最後は西田選手がブロックに当てて後方まで飛ばそうとしたスパイクを拾われ、つないだ先にいたガペの素晴らしいスパイクが決まって16対18に。

あと一歩のところでフランスからの勝利を逃した。

東京オリンピックでのブラジルの敗戦と、世界選手権でのフランスの敗戦。

どちらも世界王者に負けたということに変わりはない。でも、この2つの負けには大きな違いがある。

ブラジル戦は、「これだけやっても勝てない」と力不足を突き付けられたのに対し、フランス戦は「勝てる」と思ったのに負けたということだ。

すべてを出し切れたかと問われたら決してそうではない。少なくとも僕は、最後のサーブで自分が打つべきサーブを打つことができなかったという後悔が残った。

きっとそれは僕だけでなく、最後のスパイクを決められなかった西田選手や、ほかの選手も同じだろう。

石川祐希『頂を目指して』(徳間書店)
石川祐希『頂を目指して』(徳間書店)

それぞれが「あそこで決めていれば」「あそこで拾えたら」と、具体的な悔やまれる1本がこびりつく試合になったはずだ。

あと一歩まで行きながら、勝ち切れない悔しさ。

「惜しかった」とか「いい試合だった」と言ってもらえることは嬉しかったけれど、結果を求めるならば、ここで満足するわけにはいかない。

フランス戦に負けたとき、心から思った。

これからは勝っていくだけだ。僕たちに求められるのは勝利だと。

【関連記事】
【第1回】「メダルを獲ります」と言えなかった…男子バレー・石川祐希(28)が「金メダル」を公言するようになったワケ
大切なのはメダルの数でも、選手の美談でもない…パリ五輪に染まった日本のマスコミに抱く"強烈な違和感"
「低迷の原因は箱根駅伝と厚底」高校生が日本一に輝いた陸上800mが五輪に選手を出せない根本理由
「控えが嫌ならグラウンドに来るな」"日本一が当たり前"の大阪桐蔭西谷浩一監督が選手にかける厳しい言葉
「かつては東大卒よりも価値があった」47都道府県に必ずある"超名門"公立高校の全一覧