勝敗を分ける「スイング・ステート」とは
選挙戦の行方は、「スイング・ステート(揺れる州)」と呼ばれる激戦州の勝敗にかかってくる。アメリカ大統領選挙は州ごとに選挙人を選び、勝った州では選挙人を総取りできるという仕組みだが、民主党の地盤州(ブルー・ステート)、共和党の地盤州(レッド・ステート)での勝敗は大方見えている。
どちらに転ぶかわからない激戦州となるのは、今回の選挙では西部のアリゾナ、ネバダ、「サンベルト」と呼ばれる南部のジョージア、ノースカロライナ、そして「ラストベルト(錆びついた工業地帯)」と呼ばれる北部のウィスコンシン、ミシガン、ペンシルベニアだろう。
こうしたスイング・ステートで勝つには、有権者の3分の1を占めるとされる無党派層へのアピールとともに、対立政党の支持層を取り込むことが必要となる。そのためにはコアな層からの支持を維持しながら、多様な属性の層に訴求するための政策展開と、自身のポジショニングの再定義が求められる。
「強固な中間層を築き上げる」は浸透するのか
選挙マーケティングでいえば、母集団であるアメリカの有権者に対して、政党による「第1次セグメンテーション」があり、次にデモグラフィック(属性)、行動、心理等による「第2次セグメンテーション」をして、ターゲットを決めてポジショニングしていくことになる。
これまでに公表されている情報から読み解くと、トランプ氏、ハリス氏のポジショニングは次のようになる。
▼トランプ氏のポジショニング戦略
・MAGA、アメリカ第一主義
・環境問題より経済優先
・金利引き下げ
・インフレ対策には原油価格低下策
・減税
・関税
・ドル安主義
・財政拡大
▼ハリス氏のポジショニング戦略
・多様性と包括性を重視
・協調と対話のリーダーシップ
・気候変動対策
・人権問題
・社会正義
・中絶問題
・(強固な)中間層を築き上げる
トランプ氏のターゲットは、主な支持層である白人男性、白人労働者層、中間所得層であり、アメリカ第一主義と経済優先を掲げて、白人女性や民主党支持層の非白人層を獲りにいく。2016年に勝利したときと同じように「現状に怒りや不満を抱くサイレント・マジョリティー」に対する訴求が重要となるだろう。
対するハリス氏のターゲットは非白人、女性、若年層、高学歴層であり、白人労働者層や中間所得層を獲りにいく。そのためにハリス氏は国民の3分の2が支持する人工妊娠中絶の権利などを論点にしながら、経済政策においては「強固な中間層を築き上げる」というメッセージを発信している。