グローバル企業の役員の椅子をきっぱりと捨て、地方の中小企業のCEOの道を選んだ女性がいる。下村祐貴子さんがその人だ。転身当初「子どもだけ東京に置いて地方に仕事に行くなんて」と周囲からの非難もあったという。そこまでして彼女がやりたかったこととは――。
小さな息子を抱きしめる母
写真=iStock.com/South_agency
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6度の面接で掴んだ部署異動は、まるで転職

「スピード狂」「鉛弾マインド」という言葉に思わず目を惹きつけられた。

これは、キッズ&ベビー用品を販売する「ケラッタ」のCEOであり、共創型M&Aで地方のものづくりをサポートする「MOON-X」執行役員の下村祐貴子さん(44)のパソコンに貼られたステッカーの文字だ。

「これはMOON-Xのバリューなんです。今できることは即断即決でやりきる、そして困難な場面に直面しても立ち向かい、前進し続けるという意味です」と下村さんは笑う。自身は、スマートなファッションに身を包んでおり、いかにもスタートアップ企業のトップといった印象だ。

ケラッタCEOの下村祐貴子さん
撮影=プレジデントウーマン編集部
ケラッタCEOの下村祐貴子さん。「地方のものづくり企業をナンバーワンブランドに押し上げる」と意欲を語る。

2002年、大学卒業後の下村さんのキャリアは、老舗グローバル企業のP&Gからスタート。しかも流通戦略を担うゴリゴリの理系部署だった。

大学時代で学んだことを大いに発揮できる部署ではあったが、そもそもP&Gはブランディングやマーケティングで有名な企業。

組織の本丸で働きたいと思い、25歳で広報に異動願いを出す。しかし理系キャリアはまったくの畑違いで、まるで転職するようなもの。何度も、何度もトライし、面接をくぐり抜け、6度目にしてやっとのことで念願部署への異動を果たした。