「違う!」と思われながらも、大改革を断行
このようにして下村さんが率いる、新生ケラッタがスタートした。前社長の経営路線から、大きく2つ変えたことがある。
まず手をつけたのが社員の意識改革だ。
前社長はケラッタの創業者だから、よくも悪くもすべてがトップダウン。何を決めるにも前社長の“鶴の一声”ですべてが決まっていた。
「でも、これから会社が大きくなっていけば、私一人で会社を見きれなくなります。販売戦略にしても、何にしても『私はこう思うけれど、社長はどう思いますか?』と自分の提案を持ってきてほしいと、引き継ぎから半年間ほど口を酸っぱくして言いました。でもこれまでのやり方で動いてきている中、すぐには意識を変えられないし、最初はなかなか提案を持ってこない。『そんな簡単に決められません!』と反発もありました。でも、社員は何年もここで働いているので、絶対につくりたいものや、新しいアイデアがあるはずなので、時間をかけて引き出していきました」
しかし、社員はともかく、現在相談役となった前社長はどう思ったのだろう? 創業者の自分を否定されたように思わないだろうか? 通常のM&Aでは、前社長のやり方を真っ向から変えるのはご法度とされているが。
「きっと『それは違うよ、シモンヌ(下村さんのニックネーム)』と内心では思っていたでしょうね……(苦笑)。彼はゼロイチでケラッタをつくった人だから、戦略に関して素晴らしい能力を持っているので、その意見は取り入れています。けれど組織づくりに関しては、何れ大きな企業にしたいと思うと、それを見越した組織づくりにする必要があるのはわかっていたので、大企業での経験が役立ったと思います。各々のいいとこ取りで経営していこうと思ったのです」
2つ目は、半期に一度、明確な目標を持つこと。
2023年に入ると、楽天の「ショップ・オブ・ザ・イヤー」を勝ち取ることを下村さんは宣言した。
これは楽天市場の5万5000以上のショップの中から上位0.3%だけが選ばれる名誉ある賞。楽天サイドからもかなり難しいと言われていたし、今度ばかりは社員たちも「違うよ、シモンヌ」と思ったに違いない。