逆に国税が約400億円支払った

しかし、武富士創業者一族はその処分を不服として裁判を起こしたのです。

この裁判は、最高裁まで争われ、最終的に国税は敗けてしまいました。最高裁では「当時、長男は香港に居住の実態があった」として、贈与税は課せられないという判断を下したのです。

国税は徴収していた税金を創業者一族に返還しただけではなく、税金を仮徴収していた期間の利子約400億円までを払うことになったのです。

武富士一族が利用した仕組みである、「海外の資産を海外に居住している者に譲渡すれば贈与税はかからない」というものは、法律の欠陥のようにも思われます。

実はこのとき国税当局は、この抜け穴をふさごうとしていました。平成15(2003)年の税制改正で「外国に住んでいる者に外国の資産を贈与しても、日本国籍を有するならば贈与税がかかる」ようにしたのです。

穴を塗り込める
写真=iStock.com/Algul
抜け穴をふさごうとしていた(※写真はイメージです)

税制改正の直前に駆け込みで実施した

しかし、武富士の創業者一族は、この税制改正の直前に駆け込み的に贈与を行ったのです。

平成15(2003)年度の改正により、「海外に5年以上居住し、日本国内に5年以上住所がない人が、海外の資産を贈与された場合は、贈与税がかからない」ということになっています。

だから、資産を譲渡される人が5年以上海外に住まなくてはなりません。

しかし、武富士一族がこの節税スキームを行ったときには、この「5年以上」という縛りがなく、ただ海外在住であればよかったのです。

そのため、このような莫大な贈与税を簡単に逃れることができたのです。

というより、武富士一族は、平成15(2003)年度の改正を見越して、その前にこの節税策を施したのでしょう。

一般庶民としては、非常に面白くない話ではあります。

ちなみに、武富士はその後、資金繰りが悪化して、会社は清算され消滅しています。