「財団」を使った節税スキーム

昨今の金持ちの相続税逃れの手段として、「財団」をつくったり、財団に寄付をしたりすることがあります。

財団というのは、まとまった財産を元手にして、何かを行う法人のことです。つまりは、資産家などが自分のお金を拠出して団体をつくり、何かの事業を行うのです。

そう聞くと非常に素晴らしいもののように聞こえますが、実態はそうではありません。

資産家が財団をつくったり財団に寄付をすれば、税金がかかりません。財団を作れば、資産家は税金を払わずに自分の財産を他の人に移転することができるのです。

財産を自分で持っていれば、死んだ後、遺族に相続税がかかります。死ぬ前に遺族に引き渡せば贈与税がかかります。

そこで、資産家は、財産を持っていればいずれ税金で持っていかれてしまうので、財団をつくって財産をほかに移すのです。

「財団」は闇に包まれている

「でも財団をつくったら、そのお金は社会のために使われるのだから、資産家は損をするじゃないか」

などと思う人もいるかもしれませんが、それは早計です。

大村大次郎『脱税の日本史』(宝島社)
大村大次郎『脱税の日本史』(宝島社)

財団のお金の使い道は、実は闇に包まれています。

「財団は構成員の協議で財産の使い道が決められる」というのが建前です。でも、財団の構成員は資産家の息がかかった人です。だから、財団の財産の使い道は財団を作った人の思いのままです。

第三者を財団の中に入れなくてはならないという法律もなければ、財産の運用をチェックする外部機関もないのです。

また、財団の構成員には財団から給料が払われます。資産家は合法的に財産を身内に移転することができるのです。

某有名自動車メーカーの創業者や電機メーカーの創業者など、「財団」を作っている資産家はたくさんいます。彼らは一応「いいこと」をしているかもしれませんが、彼らが税法上の大きな特典を得ていることは見逃せない事実です。

【関連記事】
【第1回】これがあったから藤原道長は最高権力者になれた…NHK大河では描かれない「平安時代の脱税システム」の中身
「地方自治体に潤ってもらっては困る」絶好調のふるさと納税に総務省が"嫌がらせ"を繰り返す残念すぎる事情
「相続税100%」を導入しなければ超高齢社会を乗り切れない…世代間対立を避け不況を解決する最強策
ついに「農協崩壊」がはじまった…農林中金「1兆5000億円の巨大赤字」報道が示す"JAと農業"の歪んだ関係
ポスト岸田「1位石破茂、2位上川陽子、3位小泉進次郎」は大ウソ…自民党支持者だけに聞く「次の首相」ランキング