所得税は日本で申告していた

竹中大臣はこの時期、所得税の申告は日本で行っています。もし竹中大臣がアメリカに居住していたということであれば、所得税も日本で申告する必要はありません。

なぜ所得税は日本で申告したのに、住民税は納めていなかったのか。

ここが竹中平蔵氏の疑惑の重大なポイントなのです。

住民税は、1月1日に住民票のある市町村に納付する仕組みになっています。1月1日に住民票がなければ、どの市町村も納税の督促をすることはありません。だから、1月1日をはさんで住民票をアメリカに移せば、住民税は逃れられるのです。

「アメリカでの納税証明書」は提出しなかった

竹中平蔵氏は「住民税は日本では払っていないが、アメリカで払った」と主張しています。日本で払っていなくてもアメリカで払っていたのなら、ともかく筋は通ります。

それを聞いた野党は、「それならアメリカでの納税証明書を出せ」と言いました。でも竹中氏は、最後まで納税証明書を国会に提出しませんでした。

バツマークを指で作るビジネスマン
写真=iStock.com/masamasa3
「アメリカでの納税証明書」は提出しなかった(※写真はイメージです)

住民税というのは所得税と連動しています。所得税の申告書を元にして、住民税の申告書が作成されます。

これはアメリカでも同じです。国内で所得が発生している人にだけ住民税がかかるようになっているので、アメリカで所得が発生していない竹中氏が、住民税だけを払ったとは考えにくいのです。

税制の専門家たちの中にも、竹中氏は違法に近いと主張をしている人もいます。

日本大学の名誉教授の故北野弘久氏もその一人です。北野教授は国税庁出身であり、彼の著作は、国税の現場の職員も教科書代わりに使っている税法の権威者です。左翼上がりの学者ではありません。

その北野教授が、竹中平蔵氏は黒に近いと言っているのです。

ただ、この脱税疑惑は、当時の小泉内閣の人気もあり、うやむやになってしまいました。