ジョージアの友人たちは自由に暮らし人生をエンジョイしている

ジョージアには、暗黙のルールも社会的なプレッシャーもあまりありません。日本に比べると皆かなり自由に、気持ちにゆとりを持って過ごしている気がします。そこがジョージアのいちばんの魅力であり、今後も大事にしたい部分です。

私はときどきジョージアに帰国するのですが、実はそのたびに少し落ち込んでしまうんです。自分としては、これまで日本で精いっぱいがんばった、身を削って働いたし自分なりに達成感もある、だから以前より少しは立派になったぞと思って、胸を張って帰るわけです。

ところが、帰国して友人に会うと、全員からものすごく自由で幸せそうな雰囲気がにじみ出ているんですよ。その雰囲気に圧倒されてしまって、「みんな僕より幸せそうに暮らしているじゃないか、僕のがんばりは何だったんだ」と思ってしまうんです。

あんな幸せそうな姿には、少し立派になったぐらいじゃとてもかなわない。そもそも立派になったという考え方自体、友人たちにはまったく通用しないでしょう。だから、ジョージアに帰るたび、自分が甘かったなと思い知らされるんです。いかに自由で幸せかという観点で見たら、友人たちのほうが勝ち組で私のほうが負け組だなと(笑)。

若者はがんばらなくていい? 揺れ動いている現在の日本

私は日本の会社を退社後、ジョージアに戻ってビジネスをしていました。仕事も順調で楽しく幸せに過ごしていたので、いま思えばあのころは私も勝ち組でしたね。その後、縁あって駐日大使の役目をいただき、再来日するに至りました。

正直、ジョージアで暮らし続けたい気持ちもありました。でも、大切な使命をいただいたわけですし、国のために働けるなんて願ってもないチャンスですから、自分なりに精いっぱいがんばろうと思ったのです。その気持ちはいまも同じで、貴重な経験をさせてもらっていることにとても感謝しています。

駐日ジョージア大使 ティムラズ・レジャバさん
撮影=市来朋久

日本は私にとって第二の故郷であり、大好きな国です。最近はGDPが世界4位になったり円安が進んだりしているからと、自国に不安を持つ人が増えているようですが、日本には長い歴史と固有の文化、そして国民の底力があります。国を支える基盤がしっかりしているのですから、もっと自信を持っていいと思います。

ただ、現状に甘んじているうちにズルズル落ちていってしまう可能性もゼロではありません。例えば最近の日本では、皆が若い人たちに対してすごく気を使っていますよね。上司はより優しく、労働時間はより短く、無理な仕事は極力させなくなっている。「がんばって成長しよう」から、「がんばらなくていいんだよ」という方向へ変化しているように感じます。