ドライバーの労働環境改善のために必要なコト
ドライバーの生活習慣がここまでひどくなった根源は、先述したジャストインタイム方式による「理不尽な時間制約」、そして「劣悪な待機環境」にある。
縦にも横にも長い日本。モーダルシフトや中継輸送を取り入れたとしても、ドライバーの長時間拘束はこの先も当分解消されることはない。
2024年問題において、荷物ではなくドライバーの「過労死」を本気で心配するのならば、「時間の削減」よりも先に、「待たせる環境の改善」や「健康的な生活の促進」、「健康管理ができるほどの賃金の保証」をするべきではないのか。
「休憩所」や「待機所」など、彼らが長い航海のなかで使用できる施設やサービスを作ることが、本当の“働き方”改革なのではないのか。
先に述べた通り、仕事が終わったあとの「休息期間」というのは「完全自由な時間」でなければならないが、一度「航海」に出ると、必然的にトラックの周辺から離れることはできないため、“完全自由”になることは実質不可能だ。
家に毎日帰れる仕事ならば、近くのカラオケや映画、ジムなどで心身ともにリフレッシュもできるが、航海が長くなるほど彼らの生活はリフレッシュから遠ざかり、歯医者にすらまともに行けない。
「荷物が届かなくなる」と心配している場合ではない
健康食を食べたくても、SA・PAなど大型車が止められる場所にはこってり大盛りメニューばかりが豊富にそろい、栄養管理も難しくなる。
それだけではない。仕事中、あれだけ待機した彼らに待っているのは、コインシャワーの順番待ちだ。貴重な仕事終わりの時間、彼らはなおも「待たされる」のだ。
コレの何が働き方改革なのか。労働時間よりもやるべきことは、その避けられない「長い航海」のなかで、いかに「オアシス」を提供するかではないのか。
一方、今回の働き方改革によって、トラックドライバーの労働環境を改善する機運になったという声もある。トラックGメン、下請法の改正など、国もようやく動きつつある。が、非常に遅く、まだまだ弱い。
繰り返すが、ドライバーや道路使用者の命を守るためにも、彼らの過労死対策は「人手不足」や「物流の停滞」以上の急務である。誰かが犠牲になるサービスは、もはやサービスではない。
2024年問題で「荷物が遅れる」などの心配をしている場合ではない。働き方は、彼らの労働環境を変える千載一遇のチャンスである。そんな貴重な機会を、間違ったルールや凝り固まった商慣習で台無しにせぬよう心から願っている。