トイレも、大型車を止める場所もない

路上には当然、トイレがない、「尿入りのペットボトル」を外に投げ捨てるドライバーが社会問題化しているが、そんなドライバーはごく僅か。多くのドライバーは様々に工夫をしており、摂取する水分を少なくし、トイレに行かなくてもいいようにする人も。

そんな状態で長時間座り続けるため、エコノミークラス症候群は彼らの職業病の王道だ。こうして長時間座ったままの待機後にさせられるのが、先にも説明した「荷役作業」。既述通り、重い荷物を手荷役する現場もある。

これを「トレーニング」や「ダイエット」とポジティブに捉えるドライバーがいるが、長時間座り続けた体でこのような作業をするのは、ただの「体の酷使」だ。

とはいえ、荷役時間は座っている時間ほど長くはない。先述通り国のアンケート調査では平均は約1.5時間だ。時間という変数で見れば、他のブルーカラーの現場よりも肉体労働時間は短い。にもかかわらず、ドライバーのなかには「体が資本だ」「トラック飯だ」と、野菜もほとんど摂らず大盛りで高カロリー・高塩分な食事を好む人が少なくない。

時間もなく、大型車を止める場所もないため、路駐して定食屋に入れば必然と「早食い」になり、肥満や高血圧のリスクはより高まる。

全国各地を走るトラックドライバーにとって、食事は最大の楽しみの1つであるし、手荷役になればより腹は減るだろうが、それでも偏った食生活を正当化できる理由にはならない。

トラックが走る高速道路
写真=iStock.com/gyro
※写真はイメージです

「労働時間を短くすれば過労死がなくなる」は大間違い

睡眠も非常に不安定になりがちだ。日によって昼夜逆転したり、繁忙期には3時間しか眠れず、常に睡眠不足の状態で走っているドライバーは世間が思う以上に多い。

また、こうした眠気やストレス、長い待機時間に手が伸びやすいのが、「たばこ」だ。

世間の喫煙率は直近の数値では男性25.4%、女性7.7%だが、SNSで行ったトラックドライバーへの簡易アンケート(n=395)では、男女合わせて48.2%だった(トラックドライバーの97%は男性)。

筆者が何よりも懸念しているのが、「酒」だ。トラックドライバーには世界的にも酒好きが多く、これだけアルコールチェックに厳しいなかでもトラックドライバーによる飲酒事故・飲酒問題のニュースは立ち消えない。

暑い中での待機やストレス、航海中の孤独、不安定な睡眠時間のなか、酒の力を借りるなどでアルコール依存症になる割合も高く、「前職までは一滴も飲まなかった弟が、トラックに乗り始めて毎晩飲むようになった」という話も。

言わずもがな、これらに挙げたものは、すべて脳・心疾患、精神疾患に直結する因子ばかりだ。こんな状態で、過労死がワーストにならないほうがおかしいのだ。

これが、筆者が「労働時間を短くすれば過労死がなくなると思ったら大間違いだ」とする理由である。