食道に「2.5センチの穴」が開いた

海兵隊の訓練に用いられるほど強烈なブートジョロキアだが、なかには積極的に大量摂取を試みる者もいる。

辛い食べ物を愛食しているアメリカのグレゴリー・フォスター氏は、ブートジョロキアに関する数々の記録を持っている。2021年11月14日には、1分間で最も多くのブートジョロキアを食べる記録に挑戦し、110.50グラム(約17個)を食べて新記録を樹立した。

ギネスブックの公式ページによると、フォスター氏は、「今回の記録への挑戦は、自分自身と、超辛いトウガラシへの愛をどこまで広げられるかを試す、個人的な挑戦でした」と語っている。

だが、たとえわずかな摂取であっても、健康上の危険を伴う。

アメリカのオハイオ州にあるミルトンユニオン中学校では2016年9月、生徒のあいだで集団被害が発生した。英インディペンデント紙によると、ある生徒がブートジョロキアを学校に持ち込み、他の生徒たちに配ったという。結果、約40人の生徒が辛さに苦しみ、皮膚の斑点やじんましん、激しい発汗や止まらない涙などの症状を呈した。うち5人の生徒が病院に搬送されている。

急行する救急車
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翌10月にはカリフォルニア州で、47歳の男性を悲劇が襲った。ブートジョロキア入りのハンバーガーを食べるコンテストに参加したところ、この男性は激しい腹痛と胸痛を訴え、病院に運ばれた。米タイム誌は、診断の結果、食道に「2.5センチの穴」が開いていることが判明したと報じている。

男性は緊急手術を必要とする状態だったと報じられている。23日間入院し、最終的には胃管を装着した状態で退院した。こうした事例からもわかるように、ブートジョロキアの摂取は予想外の危険を伴うことがある。

「雷鳴」のような激しい頭痛を引き起こす

なお、現在最も辛いトウガラシとして世界記録を保持する「キャロライナ・リーパー」でも同様の事件が起きている。

英全国紙の『i』は2018年、34歳の男性がキャロライナ・リーパーを食べた後、数日間にわたり「激しい」首の痛みと「耐え難い」頭痛に悩まされたと報じている。この種の頭痛は「雷鳴頭痛」とも呼ばれ、突発的な激しい痛みに苦しむことになる。

BMJケースリポートはこの件で、キャロライナ・リーパーが雷鳴頭痛を引き起こした「異常な原因」になったと指摘。雷鳴頭痛は「可逆性脳血管収縮症候群(RCVS)」とも呼ばれ、通常は特定の薬や違法薬物の摂取により生じる。