水はどのくらいのペースで、どのくらいの量を飲むのが正解なのか。医師の谷口英喜さんの書籍『いのちを守る水分補給』(評言社)より、適切な水分補給についての解説をお届けする――。

水の飲み過ぎで「水中毒」になる

「水中毒」という言葉をご存知でしょうか。

水分補給には水が適しているのですが、水だけをたくさん飲んでいると水中毒という病気になる危険性があります。

コップで水を飲む女性
写真=iStock.com/fizkes
水の飲み過ぎで「水中毒」になる(※写真はイメージです)

水中毒とは、もともとは精神疾患を有した患者が水を大量に(5~10リットル程度)飲水することにより生じる「希釈性低ナトリウム血症」の症状のことです。

食事をとらずに水ばかり飲んでいると、体液が薄まってしまい、危険な状態になるのです。いわゆる水飲みダイエットでも起きることがあります。

体液が薄まると、塩分(ナトリウムイオン)濃度も薄まり、意識がもうろうとしたり、けいれんを起こしたりする水中毒と呼ばれる状態になります。

重症化すると脳浮腫、肺水腫および心不全を起こし、死に至ることもあるのです。

1時間に1リットル以上の水を飲んではいけない

理論的には、人間の腎臓がもつ最大の利尿速度は毎分16ミリリットル(1時間に960ミリリットル)であるため、これを超える速度で水分を摂取すると体液希釈が起きるとされています。

よく見られるシチュエーションとしては、以下があります。

①スポーツで大汗をかいたのに真水ばかりを大量に摂取
②ダイエットの空腹を紛らわすために真水を大量に摂取(水飲みダイエット)
③下痢や嘔吐の水分補給に真水ばかりを大量に摂取