人体への強烈な作用と、後遺症の少なさから、インド軍はブートジョロキアをスモークグレネード(煙幕弾)として利用できないか検討してきた。タイムズ・オブ・インディア紙は2016年、スモークグレネードやテロリストのあぶり出しに利用するべく、プロトタイプが開発されたと報じている。ブートジョロキアの種子を挽いて手榴弾に詰め込んだもので、6万個が発注された。
米ワイヤード誌は、厳密にはブートジョロキアは化学兵器に分類されるほどだと述べている。
辛さはタバスコの400倍、世界一のギネス記録に…
ブートジョロキアを含むトウガラシの辛さの原因は、カプサイシンと呼ばれる化学物質だ。ブートジョロキアのスコヴィル値約100万は、次いで辛いメキシコの「レッドサビナ」の約2倍、タバスコ・ソースの400倍以上に相当する。
ブートジョロキアはインドの現地名であり、その辛さから英名では「ゴーストペッパー」とも呼ばれる。2006年には世界で最も辛いトウガラシとして、ギネス世界記録に認定された。ブートジョロキアは2011年まで記録を保持していたが、現在は近縁種にあたる「キャロライナ・リーパー」(スコヴィル値はおよそ倍の約220万)がギネス記録を保持している。
その強烈な辛さに反して、ブートジョロキアの生育条件は繊細だ。イギリスのベッドフォードシャーでブートジョロキアを生産しているサルヴァトーレ・ジェノヴェーゼ氏は、英BBCに、「このトウガラシは非常に育てるのが難しく、長い時間がかかる」と述べている。彼の農場では約7万本のトウガラシが栽培されており、そのうち約1000本がブートジョロキアだ。
強烈な辛さに耐えられる人は少ない。英スーパーマーケット・チェーン「テスコ」のエキゾチック野菜バイヤー、ハリー・ジョーンズ氏は、「このトウガラシを食べると、30秒以上にわたって灼熱が続きます。心臓の弱い人には向かないでしょう」と述べる。
数時間にわたり視力を奪われ、呼吸困難に
強烈な刺激を放つブートジョロキアは、兵器の他にも、さまざまな用途への応用が研究されている。
米フォックスニュースは2010年の時点で、女性が暴漢に対して使用するスプレー型の護身製品も試験中だと報じている。また、野生動物の撃退にも効果があるほか、軍隊の兵舎周辺のフェンスに塗る計画もあるなど、防衛目的でも使用されている。
ワイヤード誌によると1992年までに、2000以上の警察機関がOCスプレーを使用していた。OCスプレーとは、カプサイシンを主成分とするもので、即座に皮膚や粘膜の炎症を引き起こし、強制的に目を閉じさせ、呼吸を困難にする効果がある。