しかし、「3人に2人は効果を感じなかったと回答」だとすればどうか。受ける印象が真逆になる。同じことを裏返しに言うだけで、これだけ人の印象は変わってしまう。

このように、伝えたい数字だけを強調したり、表現に使う数字次第で印象を左右する手法を「フレーミング効果」と呼ぶ。おなじみ「1日たったコーヒー1杯分」という表現がまさに代表だ。コーヒー1杯分が300円だとすれば、月に直せば×30日で9000円になる。月額9000円を「コーヒー代」のフレームに入れ直すことで、安さを強調するというわけだ。

どうしてもハイブランドのバッグが欲しい女性が「価格は100万円だけど、これから30年間使うとすれば、1日当たり91円だから問題ない、逆にリーズナブルだ」と妄想するコミックを見たが、まさにこの発想。身近な友人がそう言ったなら、いやちょっと待てよ、都合がよすぎると止めたくなるはずだ。

そんな都合のいい数字が、我々の周囲にあふれている。サブスク料金、習い事の月謝、スポーツジムの利用料など、月割や日割りにすることで支払う額を小さく見せられる。これだけでは年間いくら支払うのかはわからない。

買い物をした紙袋を持つ女性
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「払うお金は掛け算、使うお金は割り算を」

金融商品にもそういう例はある。金融リテラシーが高い人なら、リボ払いがいかに危ういかも知っているだろう。毎月の支払いは数千円だけと表示され、結局いくら返さなくてはいけないのかを見えにくくする。

生命保険や医療保険の支払いも、たいがいが月額で示される。それだけで決めず、せめて12をかけて年間の支払額を把握しておくべきだろう。

その逆が、先ほどの預金金利だ。年率で表現されるため、「年利3%」と大きな数字が書いてあり、ずいぶん高いじゃないかとよく見ると、その金利が適用されるのはわずか1カ月だったりする。その金利を12等分してみれば、0.25%となり、びっくりするような金利でないことはすぐにわかるのだが。

世の中にあふれるフレーミングに惑わされないために、「1日○円」「月額○円」とあったら、必ず年間でいくら払うかの計算をしよう。実際に自分はいくら払うのかを認識しなくては、その商品やサービスが適正価格なのか、それとも高いのか、お買い得なのかの判断ができないからだ。

コストを頭に叩き込むには、「払うお金は掛け算、使うお金は割り算を」と覚えておきたい。毎月支払うお金は必ず12カ月を掛け算し、年間かかる金額を確認しておく。食費や小遣いのように月予算を決めているお金は、日額か週額で割り算してみれば、使えるお金のイメージが湧きやすい。

払う時には小さな数字だけ、使う時には大きな数字だけという都合のいい方を見ていると、思った以上にお金を使ってしまうことになりかねない。