選んだ理由を説明できないといけない

【要因3】多数決を選んだ時点で思考停止する

そもそも意思決定とは複数あるオプションのうちどれか1つ、あるいは複数のオプションを選択することですが、本来は「なぜその選択肢を選ぶのか?」を突き詰めて考えたうえに答えを出すべきものです。

ところで、なぜ私たちは意思決定をしなければならないのでしょうか? それは、会社や組織のリソースが限られているからです。

積み上げられたブロックの中から「CHOICE」と書かれた木製ブロックを持つ手
写真=iStock.com/Seiya Tabuchi
※写真はイメージです

もしヒト・モノ・カネといったリソースを無限に持っているのであれば、やりたいことはすべてやればいいだけの話です。しかし現実には、大小の差はあれど、会社や組織のリソースは限られています。ですから、どんな場面においても「何を取って」「何を捨てるのか」を決めなければなりません。つまり、貴重なリソースをどのように配分するのかを決める必要があるのです。そのために意思決定においては「これがベストな選択だ」と自信を持って言えるものを選ぶべきです。

それにもかかわらず多数決で決めようとするのは、その時点で考えるのを放棄してしまうのと同じことであり、「会社や組織の貴重なリソースをムダにしてしまってもかまわないのか」と疑われても仕方ありません。

理由 その2「意思決定後に悪影響が出る」

続いて2つ目の理由、「意思決定後に悪影響が出る」について見ていきます。これも3つに分解して考えましょう。

・理由を客観的に説明できなくなる
・責任が分散する
・賛成派と反対派の対立を生む
【要因1】理由を客観的に説明できなくなる

1つ目の「理由を客観的に説明できなくなる」は、意思決定で多数決を採用すると、あとから意思決定の結果について「なぜ、このように判断したのですか?」と第三者から問われた際に「多数決で決めたからです」としか説明できなくなってしまうことです。しかしよく考えてみると、この回答は質問に対して完全に的外れであることがわかります。

たとえば、新しいシステムを導入する際に「システムAとシステムBのどちらを選択するのか?」という意思決定の会議において多数決でシステムBを選んだとします。その後、上層部から「なぜシステムAではなくシステムBを選択したのですか?」と聞かれて、「多数決で過半数の人が賛成したので導入を決定しました」と答えたらどうなるでしょうか? きっと激怒されるか、呆れられるのではないでしょうか。

【要因2】責任が分散する

多数決で意思決定を行なうと、もし意思決定の結果が振るわなかった場合の責任の所在が曖昧になってしまいます。多数派(賛成)だった人全員に責任があるのか、それとも少数派も含めて多数決に参加した人も含めた会議の参加者全員が責任者になるのか? このように曖昧になりやすく、また多数派の人の責任があるということにしても、複数の人に責任が分散されてしまいます。

責任が分散してしまうと、意思決定の結果がうまくいかなかったときに誰が率先して対応すべきか、説明責任を誰が果たすべきかがわからなくなってしまいます。結果が良ければ問題が表面化することはあまりないかもしれませんが、結果が悪ければあとからこのような問題が発生する恐れがあります。