7月7日に投開票された東京都知事選挙では、現職の小池百合子氏が3選を決めた。一方、小池氏の最有力ライバルとされていた蓮舫氏は3位に終わる結果となった。フリージャーナリストの宮原健太さんは「蓮舫氏には『マジョリティーから共感を得る』という選挙において最も大切な視点が抜け落ちていた。聴衆の共感を得ることを極端なまでに徹底して2位に躍進した石丸氏とは対照的だ」という――。
街頭演説する蓮舫氏(2024年7月3日、調布駅前)
筆者撮影
街頭演説する蓮舫氏(2024年7月3日、調布駅前)

蓮舫氏が3位に転落した「2つの理由」

7月7日に投開票された東京都知事選は、現職の小池百合子氏が3選続投を決めた一方で、前安芸高田市長の石丸伸二氏が2位に躍進し、立憲民主党や共産党などが支援した前参院議員の蓮舫氏は3位に転落するという明暗が分かれる結果となった。

なぜ蓮舫氏は支持を広げることができず、石丸氏に無党派層を奪われてしまったのか。

選挙戦を分析すると、蓮舫陣営が想定していた選挙の構図が崩壊してしまったとともに、マジョリティーに訴えかける視点が大きく欠落していたことが伺えた。

今回の都知事選で蓮舫陣営が想定していた構図は明白だった。

出馬会見で蓮舫氏が「自民党の延命に手を貸す小池都政をリセットする」と述べたことからも分かる通り、裏金問題で大逆風の岸田政権と小池氏を一体として捉え、国政の与野党対決に持ち込むことで選挙戦を有利に進めようとしたのだ。

実際、直近の選挙では4月の衆院補欠選挙で東京15区、島根1区、長崎3区の3選挙区すべてにおいて立憲が擁立した候補が当選。

また、5月に行われた静岡県知事選で立憲が推薦した候補も、自民が推薦した候補に勝利を収めている。

「与野党対決」から「既存政党vs.新興勢力」へ

「今の自民党に対する逆風はすさまじい。その風を味方につけることができれば都知事選でも勝利できる」(立憲関係者)と、満を持して蓮舫氏を担ぎ上げた立憲だが、その想定は選挙戦の中盤から終盤にかけて崩れ去ることとなる。

ネットでの知名度が高かった石丸氏が1日10カ所以上で街頭演説を繰り広げるなどして徐々に注目度を上げていくと、選挙戦は「国政の与野党対決」から、「小池氏や蓮舫氏のような既存政党の政治家に挑んでいく、新興勢力の石丸氏」という構図に変わっていった。

こうした中で、現在の政治に不満を持つ人たちの受け皿に石丸氏がなっていき、蓮舫氏は支持が伸び悩んでしまったわけだ。

両者の明暗は、都知事選における票の動きからも分析することができる。

まず、マスコミ各社の出口調査では、無党派層において石丸氏に投票した人が、蓮舫氏に投票した人を上回っており、特に若年層において石丸氏が支持を伸ばしたことが伺える。

また、石丸氏の得票率が高かった地域を上から順に並べると世田谷区(28.1%)、渋谷区(27.6%)、中央区(27.5%)、品川区(27.3%)、目黒区(27.3%)などと都心区が含まれるのに対して、蓮舫氏は武蔵野市(23.3%)、国立市(22.7%)、多摩市(22.4%)、小金井市(22.2%)、杉並区(22.0%)など、菅直人氏や長妻昭氏などの立憲議員を輩出している地域が中心で、もともとの支持層からの広がりを欠いていることが分かる。

【図表】石丸氏と蓮舫氏の自治体別「得票率ランキング」

しかも、これら蓮舫氏の上位の地域でも多摩市と小金井市以外では石丸氏に得票率で負けており、その苦戦の度合いはすさまじい。

また、蓮舫氏がここまで惨敗してしまった原因は、構図作りに失敗したからだけではない。

選挙戦での演説の内容からも、支持が低迷してしまった理由が伺えるのだ。