ふるさと納税の受入額は2022年度に過去最高を更新
そんな民間企業の努力に役所がケチを付けたというのが今回の構図だ。ポイントを付けるサイトは禁止だと居丈高に命令し、民間企業がそれに従えば、次は手数料を「公定価格」にするとでも言い出すのだろうか。どう考えても、企業が営業の一環として付与しているポイントにまで総務省がケチを付けるのは行き過ぎだろう。
総務省がそこまでして仲介業者を抑えたいのは、ふるさと納税の受入額が増加の一途をたどっているからに違いない。
2023年8月に総務省が発表した「ふるさと納税に関する現況調査結果(令和5年度実施)」によると、2022年度(令和4年度)の受入額は9654億円と前の年度の8302億円から大幅に増えて過去最高を更新した。2023年度の集計は2024年8月に発表されるが、初めて1兆円を突破したことはほぼ間違いない。さらに2024年1月には能登半島地震が起きて寄付への関心が高まったこともあり、さらに増えることが予想されている。東日本大震災が起きた2011年はまだふるさと納税が始まって数年目だったが、受入額は前年よりも一気に2割も増えていた。ふるさと納税の制度を使って被災地支援を訴える自治体も数多い。
「寄付文化は日本には根付かない」と言われていたのが…
かつては「寄付文化は日本には根付かない」と言われ続けてきた。だが、ふるさと納税制度ができたことで、確実に寄付の輪が広がってきたことは間違いない。さまざまな分野でクラウドファンディングが呼びかけられ、資金を集めることができている。2023年には「地球の宝を守れ」をキャッチコピーに、国立科学博物館が1億円の支援を求めるクラウドファンディングを実施したが、8月7日の開始からわずか9時間で目標の1億円を突破、11月5日の期限までに9億2000万円を集めた。寄付に応じた人は5万7000人に達した。国が予算をなかなか付けず困窮していた国立科学博物館の訴えに賛同し、寄付する人々が多くいたのだ。
もちろん、さまざまな返礼品が用意されていたが、これだけ多くの人の善意を「返礼品目当て」だと批判できるはずもない。また、仲介会社のレディーフォーは手数料をとって運営する民間会社だが、寄付の一部が手数料に回るのは問題だという人も少ないし、レディーフォーに寄付するにあたってポイント付与サイトから申し込んでポイントをもらう方法も広がっているが、それを批判する人はいないだろう。要は民間の創意工夫で資金集めを行い、成功しているのだ。