「返礼品なし」を選択する人も増えている

ふるさと納税も「納税」と言う言葉を使うから、税金で返礼品をもらうのはおかしい、という論理になるが、寄付をして、それが税額控除されている。寄付を受ける自治体の側が創意工夫して返礼品を用意したり、窮状を訴えて寄付を募るのは、批判される話ではないはずだ。

最近では、ふるさと納税の仕組みを使うが「返礼品なし」を選択する人も増えている。特に災害支援などの場合には返礼品を求めない人がかなり多い。前出の現況調査では、受入額9654億円に対して住民税控除額は6796億円。所得税の控除もあるが割合は小さいので、「実質負担2000円」の範囲を超えて寄付をしている人がかなりいることを示している。

とっかかりは返礼品だったかもしれないが、その地域を応援しようという人的ネットワークが着実に広がっている。各自治体も決まった返礼品だけでは飽きられるので新しい地元の特産品を加えるなど創意工夫している。

ふるさと納税の定着で、自治体の意識も大きく変わった。返礼品の人気が出ればその製品の生産者に大きなメリットになる。全国に知られることで、返礼品以外の受注も増える。事業者も返礼品に加えてもらえるよう、製品開発に力を入れる。従来、自治体が行ってきた産業振興よりもはるかに効果的なのだ。

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総務省が握る「地方交付税交付金」の権限

もうひとつ、納税者意識を覚醒させることにつながっている面も大きい。ふるさと納税を募集する際に、その使途を選択できる自治体は1745団体と全体の97.7%に達している。「地域産業振興」だけでなく、「健康・医療・福祉」や「子ども・子育て」などを指定できるのだ。納税する側が税金の使途を指定できるのは、自分が納める税金がどう使われているかに関心を持つきっかけになる。自治体側も力を入れたい政策をアピールすることで、そこにふるさと納税で予算確保することができる。

総務省は、国民が納税意識に目覚めるのを恐れているのだろう。というのも、総務省は自治体に「地方交付税交付金」と呼ばれるお金を配分する権限を握っている。その権限を背景に、地方自治体の運営や財政に口を出し、自省の官僚が副知事や副市長、部長などとして出向するポストを得ている。副知事を務めた官僚が知事選に出て知事になるというケースも少なくない。