「担当は誰や。明日行くから待っとれよ」

ですが、認知症で施設に入っているような高齢者に、自らの資産が1000万円以下であることをどうやって証明しろというのでしょう。しかもその方針では「施設の職員は、勝手に入所者の資産状況を調査できない」と書かれていた。私は「アホちゃうか」とブチ切れました。

認知症で施設に入っていて、資産なんかもう500万円もなくて、死ぬまでにお金が足りるかな、というような状況の高齢者が、自力での資産内容の証明もできないし、職員も資産状況を調査できないから負担割合が上がってしまい、ちょっと知恵の回る高齢者は資産隠しをしたりして負担据え置きという、大いなる混乱と矛盾を引き起こすような内容だった。こんなのはおかしいじゃないかと厚労省に電話して、「担当は誰や。待っとれよ、明日行くからな」と言って翌日乗り込んだのです。

その時は、さすがにみんな勢揃いしていて「方針を見直します」とあっさり“間違い”を認めました。当たり前です。現場のことをあまりにも無視した制度設計だったのは明らかでした。

電話に叫ぶ男のシルエット
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「優秀な官僚が何でもやってくれる」は幻想

「優秀な官僚にお任せしておけば、よきに計らってくれるだろう」などと盲信せず、中央省庁の官僚の仕事は現場を無視したものが少なくないのだと思っておくといいでしょう。

中央省庁ならば人材が揃っていると思いきや、実はそうでもないのです。「賢くない」とは言いません。とにかく現場のことをわかっていない人が多すぎる。現場の実態がわからないまま机上の空論でやるから、実務に合わなくなっておかしなことになるのです。

そのうえ、実務的に合わなくなっているとわかっていながら、一旦決めたことは修正したがらないというのも役人の特徴です。それを、いかに軌道修正させていくか。そこに政治の出番があるのです。