中学に入って「深海魚」になってしまう子供たち

ところが、偏差値の高さにこだわる父親は、ここでも順位を気にする。「偏差値50レベルの学校に行ったのだから、せめてここでは上位でいてくれ。真ん中なんて、許さないぞ」と、これまで以上に厳しい言葉を浴びせる。そして、大学受験では必ずリベンジできるようにと、これまで以上に勉強量を増やそうとするのだ。

しかし、ここで大きな衝突が起きる。小学生のときは、イヤイヤながらも親の言うことを聞いていた子も、中学生になり心と身体が成長してくると、これまでと同じようには動いてくれなくなる。中学受験ですでに勉強が嫌いになってしまった子は、受験から解放された途端に勉強をしなくなることもあるし、親の抑圧に対して反発心を持つようにもなる。

そうして、勉強をしなくなった子供は、みるみるうちに成績が下降をたどり、気がつくと深い海の底を泳ぐ魚のように、二度と上には上がって来られなくなってしまうのだ。こうした子供たちを受験界ではひそかに「深海魚」と呼んでいる。こうなってしまうと、何のために中学受験をさせたのか分からなくなってしまう。

水の中から水面を見上げる写真
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「何のために受験するのか」を振り返ってほしい

だからこそ、初めが肝心なのだ。そもそも、中学受験をスタートさせる前に、「なぜ、わが家は中学受験をさせるのか」を夫婦でしっかり話し合ってほしい。将来は医学部に進学させたいなど、揺るぎない目的があるのなら、大学実績は無視できないし、その夢を叶えられそうな偏差値60以上の学校を目指すのが妥当かもしれない。そうではなく、中学高校の6年間でいろいろな経験をさせ、自分の好きなことを見つけてほしいというのであれば、偏差値60以上の学校でなくても、お子さんに合った学校は見つかるかもしれない。大事なのは、何を基準に置くかだ。

すでに中学受験の勉強が走り出してしまっている場合でも、うまくいっていないと感じたら、今一度「何のために受験するのか」考えてみるべきだ。そして、進学先が決まったら、それまでの葛藤は忘れ、真新しい気持ちで送り出してあげてほしい。