人生の醍醐味は70歳から

いずれにしても、いまや、第二の人生は70歳から始まると言っても過言ではないでしょう。70歳はまだまだ心身ともに健康で、体力も気力もあり、現役時代と同様の生活ができる最後の活動期でもあります。

これまでつつがなく生きてきたのだから、これからも平穏無事に過ごしていければいいと思うより、老後の長い人生を「今度はどう生きてみようか」と考えたほうが楽しいでしょう。

ここははっきりと、自分にはまだやり残したことがある、やってみたいことが残っているんだと認めて、積極的に第二の人生を考えてみる。そのほうがワクワクしてきませんか。

私は、人生の終盤が幸せであれば、人生は成功だと思っています。「あの頃がオレの絶頂期だったなあ」と、懐かしむ人がいますが、人生はゴールを迎えるその日まで続くのです。

それなら、人生の絶頂期はなるべく後ろに持っていったほうが、その分だけ幸せが長続きするような気がします。

私は、20代のうちに映画監督デビューしたいと思い、30代でミリオンセラーの本を出したいと思っていましたが、どちらも実現できませんでした。

しかし、62歳で『80歳の壁』がベストセラーになり、高齢者向けの本が次々と売れるようになって、遅咲きであればあるほど幸せを強く感じているように思います。

ボケても、楽しい思い出はたいてい忘れない

映画を初めて撮ることができたのは47歳のときでしたが、いまだにヒット作はありません。もちろん、ヒット作は出したいと思っています。ヒットすれば、その興行収入でまた次の映画を撮ることができると考えると、楽しみが増幅します。

和田秀樹『みんなボケるんだから恐れず軽やかに老いを味わい尽くす』(SBクリエイティブ)
和田秀樹『みんなボケるんだから恐れず軽やかに老いを味わい尽くす』(SBクリエイティブ)

映画監督は年を取ってもできますから、この先の人生にまだまだ絶頂期があると思えば、楽しみはずっと続いていきます。

ただ年齢を重ねるにつれて、どうしても体が衰えていきますから、元気なうちに行動に移しておくという考えも必要だと思います。

たとえば夫婦で世界遺産を訪ね歩きたいと思っていたら、早いうちに実現させてもいいでしょう。パートナーと思い出を共有できて、その後も語り草にできれば、楽しみがずっと続くわけですから。

ボケても、楽しい思い出はたいてい忘れないので、死ぬまで楽しみは続きます。

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