そもそも緊張をほぐす必要があるのか?

また、フランス文化圏では「カフェで話そう」といった場合は、「議論する」という意味で、英語のディスカッションに当たるdisputer(ディスピュテ)という単語を使います。

商談などの導入部分に自己紹介などをすることはありますが、それは「緊張をほぐす」という意味合いではないはずです。

アイスブレイクは「緊張をほぐすためのトーク」となっていますが、大の大人が営業や商談でそんなに緊張するでしょうか。仕事で人に会うのに多少の緊張はあるかもしれませんが、わざわざそのために前振りのようなトークをして、ほぐす必要はないような気がします。

しかも問題なのは、「アイスブレイクをどうやればよいかわからない」「本論からなら話せるが、アイスブレイクが負担になっている」という人が意外と多いことです。

もっというと、日本の場合、アイスブレイクや雑談が原因のトラブルがかなり多いのです。「雑談で余計なことをいってしまった」「プライベートに踏み込んだようなことをいったら相手の機嫌を損ねた」という経験は少なからず誰にでもあるのではないでしょうか。

かえって緊張するくらいなら、いきなり本題に入る

たとえば、取引先との商談の冒頭で、「私はゴルフが好きなんですよ」と言ったとき、「そうですか。私はゴルフはしないんですよ(笑)」と笑顔で返されたら、多くの人は戸惑うはずです。

「失礼なことをいったかな」と考える人もいるでしょう。あるいは「気を使って笑顔を見せてくれたのかな」と相手の笑顔を気にする人もいるかもしれません。

結局、商談以外の部分が気になり、緊張はほぐれるどころか、かえって緊張することになります。

したがって、そんなリスクを抱えるならば、何も話さないほうがいいでしょう。「今日は暑いですね」くらいの挨拶あいさつを交わしておけば、わざわざ相手のプライベートに踏み込んだ話をする必要もなくなります。

笑顔で握手をする二人のビジネスマン
写真=iStock.com/somethingway
※写真はイメージです

アイスブレイクがうまく決まるときもあるかもしれませんが、その確率は考えている以上に低いので、それならば、いきなり本題に入ったほうがよいでしょう。

だいいち、アイスブレイクなしでいきなり本題を始めても怒り出す人なんていませんよね。だとしたら、そのことで悩むのはナンセンスというものです。

結論として、「アイスブレイクはしなくて済むならしないほうがよい」と考えたほうが緊張もほぐれていくのです。