うまくいかなくなると不満やいらだちが表面化する
序盤こそ、2位チームを大きく離して独走していたホークスですが、中盤以降に急失速。最終的には、最大11.5ゲーム差をつけていた日本ハムファイターズに大逆転を許し、シーズン2位という結果に終わってしまったのです。
不満やいら立ちは、うまくいっているうちは、さほど大きくはならないものです。しかし、ひとたびうまくいかなくなると一気に表面化します。
リーダーが「私のやり方でやってください」と要求するコミュニケーションは、窮地に立たされたとき、とても脆いのです。
歴史的な大逆転を喫して優勝を逃すと、前年はあれだけ褒め称えてくれたメディアから、数多くのお叱りを受けるようになりました。
前年に比べて、チームの力が落ちたわけではありません。失速の原因は、私のコミュニケーションがつたなかったことにあるのです。
「監督とはどうあるべきか」を再考するために組織図を書いた
失意のシーズンを終え、私は、「監督とはどうあるべきなのか」を考え直すことにしました。
そもそも「監督」とは、どういうものなのか。考え直そうとしたとき、最初につくってみたのがチームの「組織図」です。
私は本当に、ゼロから、「監督」とは何者なのかを考え直そうとしたのです。
チームに携わるいろいろな方々を組織図に当て込んでいく中で、ひとつの事実に気づきました。
監督とは、絶対的なリーダーでも、大きな組織を率いる長でも何でもなく、会社の「中間管理職」のような立ち位置なのだという事実です。
ホークスというチームのトップは、監督である私ではなく、孫オーナーです。その直下に王会長が位置し、球団社長がいて、GMがいて、ようやく私が出てきます。
――1軍の監督とは、自身の野球観を頼りに方針を押しつける唯我独尊のリーダーではなく、編成部長(今のチームに足りない部分を考え、ドラフトやFA、トレード、外国人選手獲得などの人事戦略を行うポジション)とともに、勝つチームづくりをする仕事なのだ。そのためには、各コーチ陣や2軍監督、3軍監督、トレーナー、データスコアラーたちとともに、選手がレベルアップする環境を整える必要があるのだ。そして選手たちとも常にコミュニケーションをとり、日々パフォーマンスを発揮しやすく、成長しやすい状態でいられるよう心掛ける必要があるのだ――。
組織図を書き上げて、私は自身のコミュニケーションが、組織の中の「中間管理職」として求められているコミュニケーションとは大きくかけ離れていたことを、改めて思い知りました。
このままではいけない。遅まきながら、でも今すぐに、自分自身を変えていかなければいけないのだと決意しました。