部下から信頼を得るにはどうすればいいのか。元ソフトバンクホークス監督の工藤公康氏は「選手とのコミュニケーションの取り方をあらためようと思ったとき、待ちの姿勢をやめて自分から声をかけるようにした。ささいな一言でも続けていると相手の調子がわかるようになってくる」という――。

※本稿は、工藤公康『プロ野球の監督は中間管理職である』(日本能率協会マネジメントセンター)の一部を再編集したものです。

日本シリーズで2連覇を果たし、胴上げされるソフトバンクの工藤監督
写真提供=共同通信社
日本シリーズで2連覇を果たし、胴上げされるソフトバンクの工藤監督=2018年11月3日、マツダ

「私の言うとおりにやれば勝てる」と慢心していた

2016年に喫した、日本ハムファイターズに大逆転を許してのシーズン2位という結果。私はその失敗の原因を「自身のコミュニケーションの拙さ」にあると考えていました。

2015年、就任1年目からリーグ優勝と日本一を果たしたことで、私は「自分のやり方は間違っていなかったのだ」という大きな自信を得ました。

しかしその自信は、慢心へとつながることになります。2016年シーズンは、自分の中に少なからず、「私のやり方でやってください。このやり方で、去年も日本一になったじゃないですか。私の言うとおりにやれば勝てるんです」という気持ちがあったのも事実です。

今から思えば、おごり以外の何物でもありません。自分でも知らず知らずのうちに、選手やコーチ、トレーナーに対して「私の言うとおりにやってくれればそれでいい」という一方通行のコミュニケーションを押し付けるようになっていたのでした。

その年のシーズンオフ。私は反省し、チーム内でのコミュニケーションのあり方を根本から考え直すことになります。

ここからは、私がコミュニケーションのあり方をどのように考え直し、実行したかを、具体的にお話ししていきます。