さきほど私は、選手からの「不調のサイン」を受け取ったとき、「全選手に挨拶をした後にその選手のところに戻って、ゆっくりと話す時間をとるようにしていた」と述べました。
その際、私はなるべく、コーチも交えて話すように心掛けていました。
理由は、「もしもコーチを交えなかったら、どのようなことが起きるか」を想像していただけるとわかりやすいでしょう。
まず、球団の組織図上、選手にとっていちばん近い相談相手はコーチであり、監督はそのコーチから相談を受ける立場です。監督が直接、選手と話し込んでいるのを担当コーチが見れば、「自分抜きで、何を話しているんだろう……」と気になるでしょう。
私はもちろん、コーチのその気持ちを察して、選手とマンツーマンで話したことを、そのままコーチに伝えることになります。「さっきはこの選手がこんな相談をしてくれたから、こんなことを伝えたよ」と。
気をつけなければいけないのは、ここです。
「俺について何を話してるのか」選手の疑心暗鬼を防ぐ
たとえばある選手が、昨日の試合でエラーをし、今日の挨拶後、私に守備面で不安を抱えていることを打ち明けてくれたとします。
その後、私はすぐ守備コーチに「彼とこんな話をしたよ」と報告するわけですが、そのやりとりを遠くから見ているその選手は、何を思うでしょうか。
きっと「今、おれのことを話しているんだな。さっき話したこと以外に、何か話していないかな。もしかしたら『一度、二軍に落とそう』なんて話しているんじゃないだろうか……」なんて、気になって仕方がなくなるはずです。
ならば初めから、コーチを含めて3人で話し、一度で話を終えるほうがいい。これが、私が導き出した結論です。
本人がいないところで、その人の話をしない。チームの上層部と現場をつなぐ中間管理職である監督がオープンなコミュニケーションを心掛けることで、チーム内に「不要なモヤモヤ」が生まれづらくなります。