いち早くカーボンニュートラルを達成したボッシュ

日本で気候変動の問題が語られるとき、企業のコスト負担、費用負担が強く意識され、「事業との両立は難しい」との意見が聞かれる。しかし日本は、2030年度に温室効果ガス46%削減(2013年度比)、2050年にはカーボンニュートラルを達成するという目標を掲げている。すでに是非を議論する段階は過ぎ、いまはどのように取り組むかを検討すべきだ。いずれ取り組むことになるなら、早く着手するほうが得策だとの見方もできる。

世界最大の自動車部品サプライヤーであるボッシュは、2020年にグローバルな製造業で初めてカーボンニュートラルを達成した。現在は、自社のノウハウを提供する事業を展開し、地球環境保護と収益性の両立を追求している。

欧米企業の危機感が高いのは、数値データをもとに現状を捉えているからだろう。例えば、世界の平均気温は昨年も最高を記録し、おそらく今年も更新すると予想されている。

持続可能性を高める活動に取り組み、成果を出している経営は「サステナビリティ・トランスフォーメーション」(SX)と呼ばれる。このSXについて、富士通は昨年15カ国・11業種の経営者層600人を対象にアンケート調査を実施し、「富士通SX調査レポート2024」にまとめた。

「持続可能性への取り組み」が、高い事業成果をあげる

この調査では、持続可能性に取り組むと同時に高い事業成果をあげている企業を「チェンジメーカー」と呼んでいる。チェンジメーカーは調査サンプル全体の11%を占め、そのうち過去12カ月間で利益、株価、市場シェアが増加したと回答した企業は、チェンジメーカー以外よりも高い割合を示したという。

チェンジメーカーの65%は、SXへの取り組みが売上・収益に直接貢献したと回答した。チェンジメーカーは、自社の利益拡大を最重要課題とせず、地球と社会にプラスの影響を与えるために持続可能性に取り組むが、結果として高い事業成果をあげるという“チェンジメーカーのパラドックス”を生んでいるというのだ。

チェンジメーカーがSXを推進する主な動機を見ると、「ブランドイメージ・評価向上」63%、「社会に良い影響を与える」60%、「地球環境の影響を低減」54%、「事業成長と拡大」52%、「投資の呼び込み」52%がベスト5となっている。過去12カ月で増加・向上した指標では、「顧客満足度」65%、「社会的責任(CSR)指標」65%、「収益」60%、「環境パフォーマンス指標」60%、「従業員満足度」59%がベスト5である。