アップル「2030年までに全製品をカーボンニュートラルにする」
世界中のユーザーが注目するアップルの新製品発表会「Apple Event」。昨年9月のApple Eventでは、機能やデザイン、価格とは別の視点から目を引いた製品があった。アップル初の“カーボンニュートラルな製品”として発表されたアップルウォッチ・シリーズ9(第9世代)だ。
カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするという意味だ。
製品にかかわる排出源は、主に素材・電力・輸送の3つがある。このアップルウォッチでは、製造に100%クリーン電力を使用し、排出量の78%を削減。削減しきれない部分は、環境保護プロジェクトに投資することなどで相殺する。この計算には、販売後にユーザーが充電する総電力量も含まれている。
カーボンニュートラルは、自社の活動だけで達成するのは難しい。アップルはサプライヤーに協力を求め、関連業務には再生可能エネルギーを使用してもらった。
アップルは2020年に発表した「Apple2030」で、2030年までに全製品をカーボンニュートラルにすると宣言している。製造や輸送にかかわるグローバルなサプライチェーン全体、製品のライフサイクル全体を含めてカーボンニュートラルにするというもので、「Apple2030」の第一歩となったのがアップルウォッチ・シリーズ9ということだ。
iPhoneは「クリーンなエネルギーを利用できる時間帯」を表示
昨年9月のApple Eventでは、環境・政策・社会イニシアティブ担当のリサ・ジャクソン氏が次のように語った。
「アップルは実績のある長年の取り組みにより、気候変動との闘いにおける推進的な役割を果たしてきた。再生可能エネルギー、低炭素設計への重点的な取り組みで、すでに業界をリードする排出量削減を実現している。そして、私たちは手を緩めない」
彼女がいう“気候変動との闘い”は大げさでなく、アップルの危機感と使命感が相当に強いことを示している。
アップルはオフィス、店舗、社員の出張などに関してカーボンニュートラルを達成したと2020年に発表している。具体的には、オフィスで消費電力の80%を削減し、再生エネルギーのプロジェクトを進め、他社と温室効果ガスの排出権を取り引きするカーボンクレジットも積極的に購入している。
2021年の株主総会では、全製品をリサイクル材だけで生産する構想を発表した。実際にiPhoneでは、リサイクル素材の使用が継続的に拡大している。
アプリの開発にも“気候変動との闘い”は表れている。昨年iPhoneやiPadのホームアプリに追加した「グリッド予報」だ。よりクリーンなエネルギーを利用できる時間帯が表示され、ユーザーの電力使用に役立てるツールとなっている。