メガテック企業が「持続可能性」に取り組む理由

日本でもカーボンニュートラルをめざす企業が年々増えている。しかし、欧米企業に比べると出遅れた印象は否めない。日本全体で経営者、従業員、消費者、株主などの危機感と使命感が、欧米ほど強くないせいではないだろうか。

アップルはじめGAFAMは、持続可能性(サステナビリティ)に積極的に取り組んでいる。IT企業はデータセンターなどで多大な電力を消費するため、当然の使命感ともいえる。しかし、積極的なサステナビリティへの取り組みに、業界の違いによる差はあまり見られない。

テスラは製品のEV車だけでなく、クリーンエネルギーのエコシステムも高く評価されている。太陽光で発電し、蓄電池に蓄え、EV車で効率的に使うというエコシステムだ。

テスラはマスタープランでも、気候変動の問題には必ず触れてきた。順を追って見ていくと、危機感と使命感の高まりが読み取れるのではないだろうか。

マスタープラン1(2006年)
〈テスラの最大の目的は、採鉱と燃焼による炭化水素経済から太陽光発電経済への移行を促進すること〉

マスタープラン2(2016年)
〈私たちは持続可能なエネルギー経済を実現しなければならない、さもなければ、燃やす化石燃料がなくなり、文明が崩壊する〉

マスタープラン3(2023年)
〈地球全体のために持続可能なエネルギーを創造する〉
〈地球に投資するということ〉
〈持続可能なエネルギー経済は、技術的に実現可能であり、現在の持続不可能なエネルギー経済を継続するよりも、少ない投資と少ない資源で達成できる〉

「地球」や「人類」を主語にして考えるテスラ

ただのスローガンや大言壮語でなく、マスタープラン3では目標となる具体的な数値が示されている。

蓄電:240TWh
再生可能エネルギーによる発電(電力):30TW
製造設備への投資:10兆ドル
必要なエネルギー:2分の1
必要な地表面積:0.2%以下
2022年の世界GDPに対する割合:10%
リソース面での解決困難な課題:ゼロ

2030年までに上記の数値を実現すれば、2050年には地球全体が100%持続可能なエネルギーに転換できると説明している。

もはやテスラが何に取り組むかの問題でなく、対象は〈地球全体〉、主語は〈われわれ人類〉というようにスケールが大きくなっている。

CEOのイーロン・マスク氏は「私たちが伝えようとしているのは、希望的観測ではなく、実際の物理学と現実的な計算に基づいた希望と楽観のメッセージです。地球は持続可能なエネルギー経済に移行できるし、移行するでしょう」と語っている。彼の危機感、使命感も相当に強いことがわかるだろう。

【図表】テスラの本質
筆者作成