「おしゃべりなターミネーター」に辟易

キャメロンとシュワルツェネッガーは一緒にランチをとった。「一発殴られる覚悟で断るつもりだったんだ」。キャメロンは言う。「でも、貧乏だったからシュワルツェネッガーにおごってもらった。情けなかったよ」

町山智浩『〈映画の見方〉がわかる本 ブレードランナーの未来世紀』(朝日文庫)
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シュワルツェネッガーは愛想よく『ターミネーター』のシナリオを絶賛した。彼がおしゃべりなことはまだ知られていなかったので、キャメロンは驚いた。シュワルツェネッガーがふかす葉巻の煙で気分が悪くなったキャメロンは「頼むから黙ってくれないかなあ」と思いながら、いつもの癖で手元の紙に思わず相手の似顔絵を描き始めた。描きながら、ふと気づいた。……イイ顔をしてる……。

シュワルツェネッガーのしゃべりを遮ってキャメロンは言った。

「君がやるべきはターミネーターだ」

シュワルツェネッガーの目は点になった。

家に帰ったキャメロンはさっきのスケッチに彩色した。手に拳銃を持ち、顔の半分の皮膚ががれ、内部の機械が露出した絵を。それを送られたシュワルツェネッガーはすぐにターミネーター役を引き受けた。

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