Netflix映画『シティーハンター』が世界中で人気だ。配信1週目には、「日本の週間TOP10(映画)」、「週間グローバルTOP10(非英語映画)」(4/22-28)ともに初登場1位を記録した。ライターの吉田潮さんは「主演の鈴木亮平の演技がすばらしかった。思えば、彼のやってきた仕事の流儀は、ドラマの主人公・冴羽獠と共通するところがある」という――。
Netflix映画『シティーハンター』
Netflix映画『シティーハンター』 Netflixにて世界独占配信中 ©北条司/コアミックス 1985

「うまい」でも「カッコいい」でもなく、ただスゴイ

世界に通用する高身長、広い肩幅とゴージャスな骨格、変幻自在の肉体改造、知性あふれる見事な滑舌と流暢に多言語を話す聡明さで、ありとあらゆる役を真摯に体現。名実ともに主演級となった今でも、演じる役の振り幅を際限なくえげつなく広げつつある俳優・鈴木亮平。

恵まれた体格と境遇は生まれながらのギフトだが、そこに甘んじることなく、セルフプロデュースに研鑽を積んできた「努力の人」という印象がある。結果、どんなに極悪非道な人非人役を演じても忌避されることはなく、むしろ賞賛を浴びる。気づけば爽やかな笑顔でCMに出演。

もうさ、スクリーンの中では哀しげな狂気丸出しで、眼球えぐり出して人を殺めていたと思ったら、テレビCMでは今川焼を手に「しあんわせ~」って満面の笑みで叫ぶわけよ。私だって冷凍食品の「今川焼」、思わず買いに走っちゃったし。そのギャップったら!

そんな亮平が念願の役を演じたNetflix映画「シティーハンター」が話題だ。なんというか、私が中高生の頃にアニメで観た冴羽獠そのものだった。というか、声優・神谷明も確実に降臨していた。うまいとかカッコイイとかではない。すごい。その一言に尽きる(個人的には香を演じた森田望智も実にしっくり)。

いにしえのレジェンド作品のキャラクターを演じるのは至難の業で、特に冴羽獠の役は過去にドラマで失敗した俳優もいた。亮平はどうやら有言実行、一念岩をも通したようだ。

憧れの男性像は冴羽獠

2014年に発売した初の写真集『鼓動』(キネマ旬報社)の中で、ロングインタビューに答え(取材・文/金原由佳)、子供時代に最も影響を受けた作品として北条司の漫画『CITY HUNTER』を挙げている。

「僕は主人公、冴羽獠の陰から未だに逃げられずにいると言っていいくらい、強い影響を受けています」

冴羽獠は普段はエロくてちゃらくていい加減な男だが、一度依頼を受けたら、どんなに危険でも厄介でもクールな態度で最高の仕事をすると解説し、「そういう生き方をしている男性に憧れますし、自分もそうありたいと思っています」「人間味のある男らしさやギャップに憧れます」と話していた。

また、声優の神谷明にも憧れていたことを明かしていたが、2016年にはNHK Eテレの対談番組「SWITCH INTERVIEW 達人達」で念願の共演を果たす。長年の夢や希望は口にして実現させる、願えば叶う握力は強烈である。

実際、画面越しに見る亮平はエロくもちゃらくもいい加減でもない。真面目で努力家で爽やかな好感度大魔神。女性誌の編集者が彼の連載を担当していたが、数多の芸能人に会った中でもトップクラスの人格者と絶賛していたことを思い出す。

ただし、「依頼を完璧にこなす、最高の仕事をする」点は限りなく冴羽獠に近い。インタビューの中で「コメディのセンスには自信がありませんから」と弱点もさらけ出してはいたが、それも10年前の話だ。尋常ならざる努力がどのように花開いていったか、振り幅の大きな履歴を振り返ってみよう。