その名を世に知らしめたのは「ほぼ全裸」のアレ

主演に抜擢されるも準備期間の延長など、制作秘話や苦労話が多くの人によって語られているのが映画『変態仮面』(2013年)だ。

女性の下着を被ると超人的な力が生まれ、股間のみを隠したほぼ全裸姿で悪を成敗するヒーロー・変態仮面こと色丞狂介を熱演。その肉体の完成度の高さという外面だけでなく、自分が変態であることを認めたくない逡巡という内面も見事に演じきった。

特に、ニセ変態仮面(安田顕)と高層ビルの屋上で対峙したシーンは平成の映画史に名を刻んだ。おバカなコメディの中で、アイデンティティー確立の逡巡、アンビバレントの苦悶、己の所在を問う、どこか哲学的な場面でもあった。

のちに、「日曜日の初耳学」(TBS系)に出演したとき、林修のインタビューで「『変態仮面』は間違いなく代表作」と自ら断言もしていた記憶があるので、本人にとっても格別の思い入れがあったと推測する。

その翌年には映画『TOKYO TRIBE』でこれまたほぼ全裸の凶暴な男・メラを演じた(ま、役どころとしては非常にチンケな対抗心があって、鈴木亮平がもちうる知性をすべてかなぐり捨てるような設定でもあったのだが)。これが鈴木亮平の「うなぎのぼり全裸期」。

彫像のように美しく隆起させた筋肉に見惚れた男性も少なくない。女受けより男受けのする肉体改造論は、さらに進化を遂げていく。

Netflix映画『シティーハンター』
Netflix映画『シティーハンター』 Netflixにて世界独占配信中 ©北条司/コアミックス 1985

肉体派→知性と教養も売り出す

「全裸期」で変態の称号を拝受後、間を置かずに朝ドラ「花子とアン」でヒロイン・吉高由里子の夫役を演じたのは功を奏した。聡明で紳士的、妻を支える村岡英治役で女性票を一気に獲得。もうとにかく、目まぐるしいったらありゃしない。

さらには美しい筋肉を短期間でそぎ落とし、げっそり痩せて、病弱な兄を演じたのが「天皇の料理番」(2015年・TBS)。なにもそこまで、と思っていたら、今度は急激に増量して、映画『俺物語‼』に心優しき純朴な巨漢の主人公で登場。粘土細工のように体を自在に変形させたこの時期を「形状記憶合金期」とでも呼ぼうか。

肉体派俳優と呼ぼうとした矢先に、知性と教養も売り出すという八面六臂の活躍っぷり。世界遺産に詳しいというセルフプロデュースも成功し、世界遺産の本を出版、世界遺産番組でもナレーションも担当している。それが付け焼き刃でもなく、ビジネスマニアでもなく、ほとばしる情熱と饒舌で完璧に語り尽くすものだから、老若男女がとりこまれるわけよ。これが亮平の「インテリヘリテージ期」。