「400万円の頭金を新NISAで積み立てる」という戦略

そこでこれは社会通念上、一番批判を集める概念だと思うのですが、経済戦略的には子どもをもつための「頭金」を貯めるべきです。あくまで経済の専門家としての意見を言うと「どうしても子どもが欲しい」「でも不安定で将来が不安だ」という前提でいえば、その前に400万円の頭金を新NISAで積み立てるという戦略を採用すべきです。

住宅を買うときの頭金は即座に支払いますが、子どもを手にする際の頭金は逆にできる限りぎりぎりまで手をつけるべきではありません。

たとえば400万円の頭金を新NISAで流行のS&P500連動型投資信託で運用したとしたら、子どもが大学を卒業するころには残高は2000万円を超えることが、少なくとも過去100年の実績からは期待できます。

そうやって「もし手をつけなければ子育て費用と同じレベルに増える金融資産がある」「いざとなればいつでもそれを使える」という心の支えがあれば、将来の経済不安に対する保険になります。ここで申し上げている戦略の意味は、そういうことなのです。

成長する木とお金の山
写真=iStock.com/arthon meekodong
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「東京都の出生率0.99」は社会の現実を表している

さて、話をまとめましょう。日本という国は、特に東京、横浜、大宮といった都心部に関して言えば、ほんとうに「子どもを持つことが贅沢品だ」という状況に陥ってしまったのだと私も思います。

それが社会通念的に、そして道徳的にいいかどうか、賛否の意見が百出するとは思いますが、普通に過ごしているだけだと、この環境では子どもを得ることは難しいでしょう。東京都の特殊出生率が0.99だというのはもはや、それがこの社会の現実だということです。そしてそれを乗り越えるには、何らかの割り切り、何かについてのあきらめが必要だというのが今回の記事の前提です。

さて最後にひとつ興味深い調査結果をお話しします。30年以上前にある機関が健康年齢に影響を及ぼす要因について調査した結果です。健康寿命を短くする要因には影響の大きいものが3つあります。第3位は「過度な飲酒」、第2位は「喫煙の習慣」なのですが、それらを抜いて一番寿命が短いのが「生涯独身」だというのです。

「家に帰ったら家族がいる」というのは現代社会では当たり前の環境ではなくなってきています。しかしもし健康な生涯を送ることの方があなたの人生にとって大切なことであれば、ここでお話ししたように戦略の優先順位を変えることは、思った以上に重要な人生の選択になるかもしれません。

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