「経済的な事情で子どもをあきらめない方法」を考えてみた
この記事に関してはあらかじめ2つのことをお断りしておきたいと思います。ひとつめに本来、家族をどうしていくかを考えることは個人の自由です。個々人の事情も当然あります。子どもが欲しいけれどもどうしてもできないという人も世の中にはたくさんいます。今回考えることはあくまで、「経済的な事情で子どもをあきらめようと考えている人からコンサルの依頼を受けたとして、どうすればあきらめずに済むかを考えた」という戦略の話だとお考えください。
もうひとつ、この問題はそもそも正論では解決できない社会問題になっているということです。子どもを「贅沢品」と表現すること自体、嫌悪感を抱く人も多いでしょう。その戦略を考えるにあたってはいったん、社会的な道徳意識を脇に置いていきたいと思います。なぜなら、そうすることによって反対に根深い社会の問題が浮かび上がると私は考えているからです。
さて、具体的に戦略を考えることにしましょう。私は戦略立案の専門家です。戦略は実務的には「持たざるものの勝ち筋を考える」ケースの方が多いものです。資源が足りないとか立場が弱いという前提で、それでも最大限良い未来を手にするための方策を考えるケースが多いのです。
都心の若者が子どもをあきらめる「3つの要因」
その視点でいえば、持たざる者が何かを手に入れるためには、何かをあきらめて、あることに集中することが戦略の骨子になります。では東京に住んでいる人が子どもを手に入れるために、何をあきらめて何に集中することになるのでしょうか。
この視点で、都心の若者が子どもをあきらめる3つの要因をもとに戦略を考えてみましょう。その3つとは、
1.保育所など子育て支援の環境が悪い
2.そもそも結婚を選べない
3.すべてのコストが高くお金が足りない
順に考えてみましょう。
【要因1】保育所など子育て支援の環境が悪い
少子化は共働きが当たり前の世の中になって以降、加速しています。仕事があるのに子育てまで手がまわらない。行政はその対策として保育所を拡充し待機児童ゼロを目指しています。
全国的に待機児童ゼロを達成した自治体は増えています。東京23区でも待機児童ゼロの自治体は2021年の12から2023年には21まで増えています。ただ個人にとっては保育所が自宅の近くにあるのかが問題です。
早い段階から待機児童ゼロだったのは千代田区、港区など都心部の富裕層が多い地域である一方で、町田市、国分寺市、調布市、立川市など相対的に賃料が低い都下ではまだ待機児童が解消されていません。